TODAレーシングに製作依頼していた
ノーマル圧縮比のC30A用オーバーサイズ鍛造ピストンセットが完成しました。
これ、欲しかったんですよねぇ。
C30AエンジンをOHする際に
シリンダーが摩耗していれば
直径が少し大きいオーバーサイズピストンを使って
シリンダーボーリングして組みたいわけですが
NSXの純正オーバーサイズピストンは絶版してしまっていて
(有ったとしてもコンロッドとセットになるから約44万円)
いま、C30Aを完全リフレッシュしたいと思ったら
ピストン・シリンダーまで新品を買わないと実現できなかったんです。
(それをやるならC32Bを仕立てても費用が大きく変わらない)
競技系では
TODAレーシングで直径で0.5みり大きい90.5ミリの鍛造ピストンがあって
非常に優秀で評判も良いんですが
チューニングパーツだから
ラインナップにあるのは圧縮比12.5のハイコンプピストンのみなんですよね。
ノーマル圧縮比が10.3だから
圧縮比12.5を生かしてパワーを出すためにはハイカムが必要で
制御するためにV・Proなどフルコンピュータ交換による制御が必要。
これらを組み込めば
高回転で数十馬力アップが狙えるんだけど
実際仕立てようと思うと、やっぱりハードルが高い仕様になります。
だから、TODAレーシングさんに
シリンダーをボーリングする前提で直径90.5ミリで
圧縮比は純正と同じかちょっとだけ高い位
ピストンピンの下 スカート部分を純正同様の長さにして
重量も純正に合わせて作って欲しい。
とオーダーしたんですが
見事な出来のピストンが仕上がってきました。
まだ、組み込んで全開走行したわけじゃあ無いんだけど
基本的な作りは実績があるもので
鋳造で作った純正に比べれば
強固な鍛造で作られた今回のピストンが「悪いはずが無い」と思う。
圧縮比は計算上10.5にしました。
バルブシートカットなどを行うと
若干だけど圧縮比は下がっているんだし
純正より低いのは気分悪いから誤差程度だけど高くなる方向で
バルブのリセスを純正より少しだけ深くしました。
ちょっとだけオーバーレブのバルブサージングに強くなるかな・・と言うくらい。
ピストンピンの下
スカート部分の長さは純正と同じに作りました。
実は今回これも拘った部分でして
競技系のピストンって
スカートが短いんです。
スカートはパワーを出すためには無意味な部分だし
重量も増えるだけなんだけど
エンジンが冷えていてピストンが膨張する前とか
低回転で負荷が大きいときとか
やっぱりピストンは踊ってシリンダーと当たっているんでしょうね。
スカートが短い競技系のピストンはどうしてもメカノイズが大きくなります
静かで滑らかに回るエンジンを仕立てたいと思ったら
やっぱり純正並みに長いスカートのピストンが欲しかった。
で、ピストンの重量に関しては
クランクとのバランスの点で
もちろん純正と同等にして欲しいと依頼。
アルミ鋳造で作られた
純正ピストンは400グラム程度でそれなりにバラツキはあるから
これも、純正より重いのは気分的に悪いのでちょっとだけ軽く。
と、言う様なスペックで製作依頼したんですが
やっぱり見事なモノですねぇ。。
ロングスカートに関しては
鍛造の金型の問題と加工する際の治具で限界があるとのことだったけど
見事に純正と同じ長さ。
重量は
もともとTODAレーシングのピストンセットは驚くほど重量誤差が無く
多数製作した中から重量が近いモノを選択してセットにしているんだと思うけど
6個のバラツキはだいたい1グラム以内に収まってくる。
今回のピストンは10台分 60個作ったんですが
無造作に一箱開けて測りに載せてみると388.6グラムで
純正より10グラムほど軽く出来ているので狙い通り。
ではもう1つ・・と測りに載せると388.6グラム
あれ?同じの載せちゃったかな・・とまた1つ測ってみると388.3グラム・・
やっぱりスゴイねぇ
鍛造素材とは言え
アルミをこれだけ削りだして作った400グラム近い部品が1グラムの誤差に収まるってのは
凄まじい高精度だと思う。
「ピストンの裏に刻印が出来ますよ」と言われたので
では・・というわけでT3CraftWorksのロゴをレーザー刻印してもらった。
そんなわけで
念願だったC30A用鍛造ピストンセット
定価20万円で販売開始します。
まあ、普通に乗っていたら一生使わないかも知れないスペシャルパーツだけど
いつかC30Aエンジンの完全リフレッシュを目指すなら
是非欲しいモノだと思います。
お客さんの中には
「とりあえず将来のために買っておく!」と言ってくれる方もいますが
10台作っちゃったから1台でも売れると嬉しいです。
ただ、困ったことに
この90.5ミリピストンは
ピストンリングのメーカー在庫に限りがあるそうで
あと30台分くらいしか出来ないんだそうです。
(リングは一度に膨大な数を作る必要があるんだそうです)
だからもし、今回の製作ロットが完売したなら
追加で20台分くらい作って
10台くらいはT3で当分保存しようかと考えています
あと10年くらい経ったら
シリンダーコンディションが悪くなって
エンジンオーバーホールするために
オーバーサイズピストンが欲しいという需要がけっこう増えてくる予感がするんです。
みんながみんな
C32B換装はしませんからね。
落ち着いたら
同じコンセプトでC32Bのオーバーサイズピストンも作りたいと考えています
これが完成したら
TYIZ号のエンジンもOHしたいな。
そんなわけで
欲しかった部品がまた1つ完成しました。
ピストンはスーパーマニアックなアイテムだけど
来月にはもうちょっと一般的な面白いモノが出来ます。
来週水曜 3月1日で
T3TECは開業2周年になります。
今回はお祭りイベントはしませんが
多数のお客さんに支えられて経営は順調に進んでいます。
ファクトリーは日々色々な作業を行っているんだけど
ちょっと身辺が慌ただしくて
紹介している時間が取れないんですが
考え事をしながら
けっこう楽しく毎日を過ごせているのは
ホントにありがたいです。
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