こんにちは、TYIZです
以前からやってみたかった
NSXのフェルインジェクター交換をテスト開始しました。
インジェクターは
いまさら語るまでも無い役目が知られた部品だけど
燃料タンクの中のポンプで
ガソリンに圧力をかけておいてホースでエンジンに導き
電気信号で通路を開いてガソリンをエンジン内部に噴射するノズルのことです。
ガソリンを噴射する量は
燃料にどのくらいの圧力をかけておくか?と
インジェクターに通電する"時間"・・で変化します。
燃料圧力は
プレッシャーレギュレーターで
インテークマニホールドの内部に対して常に+2.5s/cm2程度を維持していて
エンジンコンピュータが
走行条件に対して必要な燃料の量を演算して
インジェクターへの通電時間を制御して
適正な燃料の供給量を決定しています。
エンジンが吸気する力を利用して
霧吹きの原理でガソリンを吸わせていたキャブレターに対して
あらかじめ燃料に圧力をかけておいて
電気信号で噴射量を制御しようというのが
電子式燃料噴射装置というわけで
出力向上はもちろん燃費や排気ガス浄化の点で大きなメリットがあり
電子制御技術の発展と共に
自動車の世界も80年代から一気に燃料噴射装置が主流になり
キャブレターは淘汰されていきました。
初期型NA1に使われている純正インジェクター
06164-PT3-A00はC30A専用というわけでは無く
90年頃の
アコードやインスパイアなどと共通品で
不思議に思って色々調べてみると
燃料圧力を標準2.5s/cm2に対してNSXでは3.5s/cm2にして
吐出量を増やす
オーバードライブ的な使い方をしているみたいなんですね。
燃料圧力を上げれば
噴射量も増えるし燃料の霧も細かくなるから
メリットは大きいんだけど
燃料ホース&接続部への負担は非常に大きくなるので
NSXでは
高圧側の接続部がホースバンドじゃなくてバンジョウ&ボルトになったんでしょう。
だけど
なにしろNSXのインジェクターは設計が古い・・
そりゃ
時代的には30年近く前ですからね。。
更に
メカニカルなバルブ機構であるインジェクターは
やはり、経年変化という物があって
長い年月燃料が流れていると
噴射部に汚れが溜まったりして
噴射量が変わってきたり
きれいに霧化出来なくなってきたりします。
すると
6気筒の全てに同じ量の燃料が供給されなくなってきて
パワーダウンや振動の発生など
色々不具合が起きてくるわけで
だから
「洗浄液を流してインジェクターの清掃をする装置」とかを使って
インジェクターを再生する業者さんがいたりするんですが
これがけっこう費用かかるので
だったら
新品インジェクターを買って交換しちゃった方がいいじゃん・・
更に前向きに考えるなら
大いに進化している現代のインジェクターを流用すればもっといいじゃん・・
となるわけです。
インジェクターもどんどん進化して
通電に対して噴射するタイムラグの短縮や
何よりも燃料を霧化する性能の高さが進歩しています。
液体のガソリンを
どこまで細かい粒子にしてエンジンに供給できるかは
燃焼効率に大きく影響するわけで
ガソリンを出来るだけ細かい粒子にすれば
吸気した空気中の酸素と接触面が増えるわけで
素早く 良く燃えることになり
燃え残りのカーボンが出にくくエンジンオイルが汚れにくくなり
パワーと燃費と排気ガス浄化にメリットがいっぱいなわけで
各メーカーはここ数十年で
様々なアイデアのインジェクターを作って採用してきました。
古いと分かっているNSXのインジェクターをよく見ると
昔ながらの噴射口ににピンが出ているピントル型と言うヤツで
このピンの回りから燃料が円錐状に噴射されるわけですね。
この方式だと燃料の粒子が粗いので
アクセル開度が少なくてエンジン回転数が低い つまりは気流が少ない時
噴射された燃料の粒はポートの壁面や吸気バルブの上に
液状のまま付着してしまって
噴射された燃料が全て燃えてくれなくて
燃え残りがカーボンになっていくわけです。
で、やっと本題
NSXに現代的なインジェクターを組み込みたいと思って
どんなインジェクターを使おうか・・
ノーマルC30AからチューンドC32Bくらいまで対応する容量で
効率の良さそうなモノを探す・・
ニスモやサードからも
チューニングカー向けにマルチホールインジェクターは売られているけど
アフターのインジェクターは
将来的に安定供給されるとは限らないし
そもそも
効率を求めてインジェクター交換したいわけで
ターボチューンでは無いから大容量はいらいなんだから
やはり、現代的な純正インジェクターを流用してみたい・・
でも いったいどのクルマのインジェクターが適切なんだろう・・
と、メーカーの某氏に相談してみたところ
S2000のF22Cに使われているインジェクターが
「やるだけやった」設計だそうで
最善な選択肢かと思われました。
早速1本取り寄せてみると
ただのマルチホールじゃ無くて
カッコ( )型の噴射ポートで
ここから吸気2バルブに向けて長楕円に噴射するそうで
まさにDOHC4バルブ向けに設計された現代的なインジェクターです。
こりゃ面白い!
これをなんとかC30Aに使いたい・・
絶対効率良いに決まってる!
とは思ったんだけど
形状的にけっこうハードル高くて
全長はあまりにも小型で
噴射口側に付いてる樹脂部品が大きくて
そのままだとNSXのマニホールドに入らない。
どんな構造になっているのかインジェクター1本壊してみて
取付方法を模索して
インジェクター本体の小加工とアダプターの取付で解決しました。
S2000の吸気ポート形状に最適化されているインジェクターだから
NSXのマニホールドに対する取付位置で悩んだけど
噴射口の位置はNSXの純正と同じになる様にしました。
エンジンから外したインマニにインジェクター付けて噴射側から見てみると
いかにも
( )から噴射されたガソリンの微粒子が
気流に乗って吸気バルブに導かれていくのが見える様。。
これで
インジェクターそのものの取付関係は解決で
次はインジェクターのコネクター。
当然だけど
世代も違うからコネクター形状が異なるので
S2000インジェクターのコネクターを探すんだけど
やっぱりけっこう苦労した。
なんとか品番を探して
コネクターは100個
配線の防水プラグは1000個 端子は3500個!のロット販売で購入。。
あと、インジェクターの抵抗値が違うからこれも対処。
これをTYIZ号に取りつけて
V・Proセッティングを行ってテスト開始しています。
S2000は4気筒で240馬力ほど出力するので
6気筒280馬力のNSXに比べると
1気筒あたりの出力はかなり大きく
当然 インジェクターの噴射量も多いので
これを絞って制御するためには
やはり、V・Proによるセッティングが必須になると思います。
TYIZ号でセッティングを進めてみると
ハイカム仕様C32Bで350馬力近辺を出力すると
C30A純正インジェクターでは
高回転域でほぼフル噴射になってしまうけど
F22Cインジェクターだと80%ほどに収まったようです。
あらためてインジェクター開弁率の話しなんかも書こうかと思いますが
インジェクターは
あまりにも大容量の物を絞って使うのも効率が良くないし
本来100%フル噴射させてはいけないんです。
だから
一般ユーザーが行う可能性がある
ハイエンドチューンの350馬力仕様C32Bで
開弁率80%ほどに収まってくれたのは実に良かった。
同時に排気系を変更しちゃったしリセッティングしたわけだから
明確な差が分かりにくくなってるんだけど
良く回るしトルクが出たな! という感じ。
TYIZ号は
低速側もハイカムになっていて常にアイドリングが揺れているので分かりにくいけど
たぶん
老化した純正インジェクターの時は
6気筒のどこかが濃くてどこかが薄かったのが改善して
6気筒の空燃比がそろったんじゃないかなぁ・・と思う。
メーカーの人曰く
燃料を微粒子にするメリットは
まずは燃費と排気ガス浄化
走行面では
燃料の加速増量をしながら急加速していく時
気流が少なくてもポート壁面などに燃料が液状のまま付着しないので
燃焼効率が良くて過度特性が良くなる。
最高出力に関しては
燃料の霧は細かい方が気化しやすく
気化熱で吸気温度が下がるので点火時期を詰められるから
多少はパワーアップにも好影響する。
とのこと。
まあ、一番分かるのは燃費だろうから
もうちょっとセッティングを煮詰めて
ツーリングにでも出て変化を見てみようと思っています。
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