こんにちは、TYIZです
長年色々試していたNSXのクラッチ交換で
どうやら結論が出そうです。
MT車のクラッチにどんな性能を求めるのか?
オーナーの求める用途にどこまで適切に対応していけるのか?
ずっと悩んできたんですが
到着点としては
☆ フルノーマル
☆ 純正クラッチ+軽量フライホイル
☆ OSの小径メタルディスク(高圧着&軽量フライホイル)
の大筋三択になりそうです。
ノーマルは
まあ、メーカー純正状態だから
何の苦も無く普通に乗れて快適だけど
万人向け故に
空吹かし時のレスポンスは物足りなくて回転落ちも緩やか。
これに
軽量フライホイルを組み合わせてみると
扱いやすさを損なわず
レスポンス面のメーリングはかなり向上します。
まあ、これは昔から様々なクルマで行われてきた
定番のチューニングでした。
で、難題なのは
フライホイルを含めてクラッチ構成が全く変わる社外クラッチの選択。
社外で色々なクラッチセットが販売されていますが
実はNSXのクラッチは難しくて悩むことが多いんです。
クラッチセットとは
エンジンに取りつけられているフライホイルと
これに組まれたクラッチディスクとカバーで構成されていますが
フライホイルはエンジン回転を一定に保つための弾み車で
クラッチディスクは
フライホイルとの摩擦伝導でエンジンパワーをミッションへ伝えます。
で、そのクラッチディスクをフライホイルに押しつけているのがクラッチカバーです。
フライホイルを軽くしていけば
空吹かし時の回転上昇と降下が素早くなって
レスポンスフィーリングは大きく向上しますが
弾み車としての慣性が減ると
クルマが発進する時にエンジントルクだけで動き出すことになるのと
アクセル操作に対して回転上昇が素早くなるので
ペダル操作がシビアになってきます。
また
回転落ちが早いからギアチェンジの際に間を開けすぎると
ギクシャクしやすくなります。
でも、クルマが動き出したあとは
やはりフライホイルは軽い方が楽しくて
特にシフトダウンの時にアクセルをあおった際素早く回転上昇するので
回転合わせが非常に快適で楽しくなります。
あと、実はフライホイルってエンジンパワーをロスしています。
たとえば純正の重いフライホイルで
空吹かしでエンジン回転が「ワーン」と上昇するには「時間」がかかるわけですが
この時間が長いのは
重たいフライホイルを回転させるために
エンジンパワーをパワーを食っているわけです。
フライホイルを思い切って軽量化すると
回転上昇させるためのロスパワーが減るので
空吹かしでの回転上昇が「ワン!」と言う感じで素早くなるわけですが
実走行では
この、フライホイルが食っていたパワーが車輌の加速に使えるので
加速力が向上します。
これは1速2速など
吹け上がりが早い全開加速時に顕著で
超軽量フライホイルを使ったクラッチは
まるでエンジンがパワーアップした様に加速力が向上したのが体感できます。
もちろん
実際にパワーが上がっているわけじゃ無いから
回転上昇が穏やかになる4速以降とか最高速領域などには影響しませんけどね。
あくまで
急速に回転が上昇下降する時に大きく影響するのがフライホイルです。
だから
スポーツカーとしては
ドライバーが納得できる範囲で出来る限りフライホイルは軽い方が得なわけです。
クラッチディスクは
摩擦材とディスクの外径というのが大きな条件で
純正クラッチディスクは昔はアスベスト系素材で
いまは合成樹脂 広義で言うと「ゴム」に近いんだとか。
適度に滑って摩擦力もあるから
動力の伝達には適している素材だそうです。
でも、熱に弱いのと
摩擦係数が低いから
圧着力を強くしないとパワーの伝達容量が稼げない。
大きなトルクを伝達しようとすると滑りやすく
一度滑ると発熱がそれに拍車をかけて一気に滑り出して消耗が加速する。
社外クラッチでは
銅系金属の焼結材を使った物が定番で
これをメタルクラッチと言って
数十年前から競技用クラッチの素材としては実績があります。
ディスク外径と重量というのはギアチェンジに対して重要な条件で
ディスクが大きく重たいと
たとえば8000rpm回してギアチェンジの際
ミッションと直結しているクラッチディスクが
8000rpm回っている状態から6000rpmほどまで回転が落ちてくれないと
次のギアに入らないわけで
その回転を落とすブレーキを行っているのが
ミッション内部の「シンクロ」なわけです。
シンクロのブレーキ力は変えられないわけだから
クラッチディスクは
限りなく慣性が小さい方が
ギアチェンジは軽い操作力で素早く行える事になります。
と、言うことで
ディスクの慣性が少なくて伝達力も欲しい・・となると
直径が小さくて
摩擦係数は高いメタルクラッチディスクを選択することになるわけです。
ただ、メタル素材は摩擦が高い分
半クラッチのフィーリングがシビアになりやすく
条件次第では発進時に「ガガガ・・」と振動するジャダーが出やすくなります。
で、このクラッチディスクをフライホイルに押しつけて
摩擦力を維持しているのが
クラッチカバーというわけですが
これは
アルミ製のハウジングの中に大きな皿バネを仕込んだもので
強いスプリングを使って強く圧着すれば伝達力も大きくなるけど
クラッチペダル操作も重くなっていきます。
私がクラッチに求めるのは
クラッチミート時に
出来るだけ滑らかで節度があって乾いた半クラッチフィール。
ペダル操作は出来るだけ軽くてレスポンスも良好。
と、いうことで
OS技研製でAタイプという直径が小さいメタルディスクを選択。
これは
純正クラッチディスクよりちょっとだけ外径が小さくて
シンプルで軽い。
クラッチカバーは
出来るだけペダル操作を軽くしたかったので
圧着力が690キロの純正よりも軽いタイプを組み合わせて
フライホイルは
ジャダーを嫌って
あえて重たく ウェイトが付いた様な形状で作ってもらいました。
このクラッチをTYIZ号に組んだ状態でだいぶ走り回っていますが
まあ、なにしろシフトチェンジが快適で
ダブルシンクロの6速ミッションと相まって
スパスパと実に軽快にシフトチェンジが決まります。
でもね
重量増フライホイルは考え過ぎだったかな・・
純正クラッチよりは格段にレスポンスはシャープだけど
ここまで快適性に拘らなくても良かったんじゃ無いかな・・
さらに
690キロのクラッチカバーは
笑っちゃうくらいクラッチ操作が軽く
明らかに純正クラッチよりペダル操作は軽くて快適なんだけど
サーキットでの高回転酷使などを考えると
圧着が不足している感じが有ったんですよね。
今後
クラッチをどういう方向に仕立てていこうか・・
と思っていた時
サーキットメインのお客さんが
いままでのBタイプクラッチが消耗してきたので
テストがてらAタイプツインのハイスペックモデルを使ってみたい。
と言うことになり
OS技研に特注で
目一杯軽いフライホイルと990キロクラッチカバーを使った
Aタイプツインプレートクラッチを仕立ててもらいました。
(ちなみに、データは無いんだけど純正の圧着力は800キロくらいだと思われます)
さて・・どんな感じになるのかな・・
と、エンジンをかけてみると
これだけ軽いフライホイルなのに
全く普通にアイドリングしていて特に違和感は感じない。
(まあ、フライホイル以外にも
エンジンと共に回転するクラッチユニットやクランクシャフトなど
全ての回転部品には慣性があるので
弾み車はフライホイルだけじゃ無いんです)
ペダルはどのくらい重いのかな・・と踏んでみると
まあ、確かに純正より重たいけどノーマル比で3割アップくらいか・・
操作が滑らかで
ペダルを踏んでいって一番重くなるポイントを過ぎるとクルッと軽くなる。
だから踏み切った状態でペダルを維持しているのが楽なんです。
この
ペダル操作力の反転と言うのが実は大事なことで
クラッチカバーの設計次第なんですが
この点OS技研のクラッチは実に良く出来ているんです。
で、半クラッチは・・と走り出してみると
これまた
拍子抜けするくらい普通に走り出せる。
確かに
ものすごくフライホイルが軽いから
ちょっとアクセルをラフに踏むと回転の上昇下降が素早くて面食らうけど
回転上昇過程で上手くミートさせてやれば
ごくごく普通に半クラッチが使えて発進できる
じゃあ、走行フィーリングは・・と
1速で走り出してからアクセル全開してみると
これがビックリなピックアップの良さで
クルマが「ワッ」と瞬時に加速体制に入る。
(これに比べると
純正クラッチセットは一呼吸置いてからダラダラ・・と加速開始する感じですね。)
もお、TYIZ号と同じエンジンとは思えないくらいの回転上昇の早さで
1速が吹けきるのが格段に早いです。
やはり、フライホイルの慣性が小さいので
食われていたパワーがクルマを加速させる方向に追加されるから
まるでエンジンがパワーアップしたように加速が向上する。
高回転まで回してシフトアップしてスパッとクラッチを繋ぎ即アクセルオン!
フライホイルが軽いのでショックが無く瞬時に回転が落ちて即加速
実はこれも大きなメリットで
重たいフライホイルは回転エネルギーを多量に蓄積しているので
シフトアップしてクラッチを繋いだとき
回転が高いエンジンと回転が下がったミッションが繋がるので
「ドン」とショックが生じて一瞬クラッチが滑ってエンジン回転が落ちるんです。
この高回転での滑りがクラッチを大きく消耗させる原因で
フライホイルが軽いとクラッチの負担が減って寿命は延びるわけです。
もちろん
サーキット走行みたいな高回転シフトを行う条件下での話しですけど。
こりゃあスゲェや・・シフトダウンはどうだろう?
と、それほど回転をあげていない状態で5速走行中(この車輌は4.4ファイナル6速です)
5−4−3−2とトゥ&ヒールでシフトダウンを試みると
これがまたものすごくゴキゲンにシフトチェンジが決まる。
アクセルをたたく量は純正の半分以下で回転上昇する時間も体感では半分以下。
つま先で軽くブレーキ踏んだ状態で
踵でアクセルペダルを軽く撫でる感じで素早く十分な回転上昇で
軽くてシンクロ負担が少ない小径のクラッチディスクと相まって
「ワン!ワン!ワン!」とほとんど連発で2速まで落とせたのは驚いた。
試乗を終えてファクトリーに戻り
TYIZ号に組んだ重量増フライホイルは完全に失敗だったと痛感。
翌日OS技研に電話して
「いやあ〜完全に俺の考え過ぎだった・・
今更ながらフライホイルが軽いのってこんなに素晴らしいんだ!」
と、伝えて
重量級フライホイルの方向性は無しにして
欠品してしまった
Aタイプクラッチのフライホイルを増産してもらって
軽量穴加工をどこまで行うかをこれから相談打ち合わせという方向にしました。
今回のNSXは
V・Pro制御のC32B換装した初期型NA1で
TYIZ号とほとんど同じスペックなんだけど
断然パワフルに加速するんだから驚いた。
とにかく
フライホイル慣性の徹底削減でNSXってこんなに変わるんだ・・と言うのが印象でしたね。
イメージはミドルクラスのオートバイの様で
80年代レーサーレプリカ全盛期の400ccマルチみたいな感じかな。
動きが軽くてアクセルが過敏で瞬発力が素晴らしい。
ただ、ここまで過敏に仕立てると
その気になってるときは良いけど
疲れていてもアクセルワークに気を抜けないか・・と言う感じになります。
まあ、運転を楽しむ専用車としては実に楽しいし
渋滞路が無ければロングツーリングだって問題なく楽しめますけど。
なので
現段階で求めるハイエンドのクラッチセットはこの仕様で行こうと思いますが
この試作フライホイルは極端な例だけど
どこまで軽量化するかを検討してT3オリジナルとして販売していこうと思っています。
まあ、このクラッチを選択する人は少数派だと思うから
並行して
純正クラッチ用の軽量フライホイルも製作検討しています。
色々あったけど
クラッチ選択の選択肢は決まって来た感じですね。
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