現在
3機ほどエンジンの組み立て作業を依頼されているんですが
新品組み立てのC32Bでハイカム仕様を仕立てています。
C30AのMTとC32Bでは同じカムシャフトが使われていて
馬力規制もあった時代だし
低速と高速の段差が少なく
VTECが切り替わったのがほとんど体感できない様な穏やかな仕様です。
同じ年代でも
EK9やDC2のType-Rでは
カムの切り替わりで明らかにパワーが上がる様な躍動感を感じたけど
NSXだいぶ抑えた仕様なんですよね。
だから
C30Aでハイカムを組むと
高回転域ではかなりパワーアップが見込めるんだけど
V6はカムが4本あるし
VTECは低速高速でカム山が多いし
どうしてもコストがかかるのと
組み込みも大変なんです。
カムシャフト役割は
ご存じの方も多いでしょうが
4サイクルエンジンにおいて
吸排気バルブの開閉タイミングを決定し
エンジンの性格に大きな影響を与える非常に重要な部品です。
カムの形状と開閉タイミング、バルブのリフト量で
吸気量や吸排気タイミングが変わるので
エンジンのトルク特性は大きく変わります。
このカム山を
1つのシリンダーに対して低速高速2種類設けて
回転域によって切り替えることで
低速トルクを維持しつつ
高回転域のパワーを求めたのが初期のVTECというわけです。
そんな
エンジンの性格を司る重要なカムシャフトですが
これを
より大きな作用角 より大きなバルブリフト量になる仕様に交換し
エンジンパワーを求めるカム交換チューニングが
「ハイカム仕様」と言われて
昔から様々なエンジンで行われてきました。
アフター業界でのハイカムには
鉄の素材から新規に削りだして作られた「素材カム」と
純正のカムを加工して作られた「加工カム」がありますが
鉄の棒から削り出しで作られる素材カムなら
自在なカムプロフィールとリフト量が設計できる反面
非常にコストがかかります。
NSX用素材カムは戸田レーシングで販売されていて
4本で40万円ほど。
高価だけど過去のデータでは
このカムを組むと30馬力近辺のパワーアップが得られました。
加工ハイカムとは
純正のカムシャフトを研磨加工でハイカム化したもので
カムのベース円を小さくして
純正カム形状の中で作用角とリフトを大きくする方向に変更する方法で
ロッカーアーム式エンジンならではのカムチューンになります。
で、今回
戸田レーシングさんに依頼して
純正カムを使った加工ハイカムを仕立ててもらいました。
形状の問題で
MT用のカムじゃないと加工できないのと
純正カム山を削って形状を変える方法だから
作用角は戸田製素材ハイカムと同等に出来ても
バルブの最大リフト量は素材カムほどは設けられないとのこと。
ベンチテストでは
戸田レーシング製の素材カムに対して10馬力ダウンくらい性能だったそうで
つまりは
ノーマル比では20馬力アップくらいが期待できると言うことでしょう。
最高出力では素材カムに及ばないけど
加工ハイカムにもコスト面で大きなメリットがありまして
リフトが大きな素材カムはサージングを起こしやすくなるので
高回転を回すには強化バルブスプリングが必須になり
カムシャフト以外にも色々とチューニングパーツが必要になってくるんですが
加工ハイカムなら
ベース円の小径化に伴いロッカーアームの踊りに対策は必要だけど
とりあえず
カム以外のエンジン部品には手を入れなくてもパワーアップが見込めます。
チューニング目的でカム交換のみを行っても良いんだけど
エンジンを降ろさないとカムは交換出来ないし
やはり、重整備の時やエンジン本体チューンの時に
同時に行うのが効率が良いかと思います
そんなわけで
今回の加工ハイカムを新組のC32Bに組み込んで
バルブタイミングを計測してみると
なるほど、リフト量は少ないけど
戸田レーシング製素材カムとほぼ同等プロフィールですね。
好結果は目に見えているし
この加工ハイカムは
今後T3ののオリジナルとして扱っていく予定です。
このあと
C32B改3.5リッターエンジンの製作依頼があるので
同時に部品を発注してあった物が届きました。
こちらは
400馬力近いハイパワーチューンドになるし
シリンダーにも手を入れるので
バルタイを正確に調整できる様スライドカムプーリーを使って
オイルポンプも強化トロコイドを組みます。
NSXでオイルポンプトラブルというのは
ずいぶん前には時々聞いたんだけど
いまは、サーキット派の人を含めて滅多に壊れないんですよね。
シフトダウンオーバーレブで
オイルポンプが割れて油圧が無くなって壊滅的なブローというのは
RB26などで時々見たけど
ロッカーアームを使うVTECでは
オーバーレブでサージングするとバルブとピストンが当たって
エンジンが止まっちゃうからかも知れない。
あと
NSXのエンジンオイルクーラーでちょっとノウハウ紹介。
いままで色々な方式を試してきたけど
NSXのエンジンオイルクーラーは
オイルパンから電動ポンプで汲み上げて
フロントバンパーの中にオイルクーラーコアを置く方式に決定ですね。
なにしろ
コアの置き場所が難しいNSXですが
やはり、
ラジエターの前にオイルクーラーを置かないと効率よく冷えてくれない。
でも、生命線である全油量を高油圧のままホースでフロントに導くのは
やはりリスキーであるため
ずっと電動ポンプによる循環を試していました。
その際
オイルパンからオイルを取り出すのが苦慮するんだけど
オイルストレーナーに当たらない形状でダクトを設けています。
エンジンのオイルポンプというのは
最大70リットル/分という凄まじい勢いでオイルを吸っているわけで
オイルパンの中のオイルなんか
数秒で汲み上げちゃう勢いです。
だから
オイルパンの中にはヘッドから降りてきた
泡だらけのオイルが溜まっているのが想像できるわけで
電動ポンプで効率よくオイルを取り出すためには
出来るだけ液体だけを汲み上げたいので
こんなオイルダクトを作って溶接で取りつけています。
小型の電動オイルポンプというのが
なかなか好適な物が無くて困っていたんだけど
とりあえず、現在手に入るポンプを使って充分な冷却能力を得ていて
エンジンチューンが進んで熱量が上がった場合
ポンプを2機使って流量を稼ぐことで性能を上げています。
ホントは
某メーカーで大流量の電動ポンプが今年の夏に出来る予定だったんだけど
製品化が頓挫してしまったので
とりあえずは熱量に応じてポンプを増やして対処していくことにしました
コストはかかるんだけど
安全確実な冷却を行うにはこれが最善と言うことになりましたね。
|