NSXの定番故障「メインリレー」ですが
実は今まで経験した限りでは
トラブルを起こしているのはリレーそのものじゃなく
基板へ取りつけている部分のハンダにクラックが生じるためでした。
これに気付いたのはだいぶ前なんですが
初期型AT車に乗るお客さんが
遠方に出かけて帰ってくる途中
高速のパーキングで休んで発進しようとしたら
数十メートル走ったところでエンスト・・
「あれ?」と思ってセルを回して再始動。
その後も
時々失速したりエンスとしたりを繰り返し
高速は危ないので一般道に降りて 何とか騙し騙し帰宅したそうで
「始動後しばらくするとエンストするから診て欲しい」との依頼でした。
今までメインリレーの故障というと
「出先でエンジンを止めて
再始動しようと思ったらセルは回るけどエンジンはかからない・・」
と言うパターンがほとんどで
キーONの状態でメインリレーをコンコン叩くと一時的に復帰して
エンジンを止めなければそのまま走り続けられた・・
と言うことも多かったんです。
だからそもそも
「再始動は出来てしばらく走れるけど時間の経過と共に不調が再発」
と言う症状は
「おそらくメインリレー以外に原因があるんだろうな・・」
と、思って検証をはじめ
アイドリング状態でしばらく様子を見ていたら
突然ストン・・とエンスト。
「おお!ホントに止まった!?」とセルを回してみるとかからない・・
数分経ってセルを回すと何事も無かったように始動。
ポンプとか燃料系統かな・・と疑いながらも
新品のメインリレーを用意して
症状が出たところで素早く交換してみると即再始動できて
元のメインリレーに戻すとかからない・・
と、いうことは
原因はメインリレーみたいだ。
なので
このNSXに関してはメインリレー交換で修理は完了としたんだけど、
実際
メインリレーの黒い箱の中で何が起きているのか?
故障原因の特定と修理 あるいは予防が出来ないのか?
と思って検証を開始してみた。
そもそもメインリレーというのは
何を行っているのか?
というと
イグニッションキーONでエンジン制御コンピュータへの通電と
始動時に燃料ポンプを回すための動作をしていて
そのため内部にはリレーが2個使われている。
運転席後ろの壁に取りつけられているメインリレー
あの黒いケースを開けてみると
リレーが2個と数個のダイオード
それにセメント抵抗が入っているだけ。
このリレー
調べてみると面白く
2個が同じモノでは無く
フェルポンプ駆動側はコイルの定格が10V未満の特殊な仕様だそうで
12Vで駆動するためにセメント抵抗を入れてる
なぜコイルの電圧が低いのかと言えば
セルを回している最中 バッテリー電圧は大きく下がるので
その時にリレーがOFFにならない様になっている仕様らしい。
で、セルを回している最中は抵抗をスルーして
リレーコイルに直接電圧をかけるようにダイオード入れて回路を組んである。
うん、けっこう面白い構造だけど
凝り過ぎな感じもするけど・・
と、なると
故障の原因としては
リレーの接点が焼けて消耗しているんだろうなぁ・・と思い
上記の
「時々不調になる」という症状だったメインリレーを開けて
リレーの接点をマクロで撮影してみると
ほとんど消耗が見えられない。
本当にリレー接点が原因なんだろうか? と思って
基板の裏側 リレーの接点端子がハンダ付けされているところに
リード線をハンダで付けて
「時間の経過と共にエンストしそうになったら
接点配線を繋いで エンジンが息を吹き返したなら
原因はリレー本体だな」
と、言う検証方法を行ってみようと思い
基板の裏側にリード線をハンダ付けしてテスト開始してみたら
いっこうにエンストしなくなってしまった・・
なぜだ?故障していたはずのメインリレーが治っちゃったよ・・と
基板の裏側を撮影した写真を拡大してみると
基板にハンダ付けされているリレー端子の部分にクラックが見える・・
まさか・・このハンダのヒビが原因なの??
手元に
故障したメインリレーのサンプルがいくつかあったので
みんな箱を開けて基板をチェックすると
まあ〜お見事・・みんなハンダにクラックが入っている・・
原因はこれかぁ・・
老眼じゃ見えにくいんだけど
写真撮ってモニター等倍で見ると明らか。
さらにじっくり検証してみると
これって
ハンダ不良もあるけど構造的な問題もあると思うなぁ・・
リレーは基板に対してけっこうな重量物だし
メインリレーって運転席後ろの壁に垂直に
ボルト1本で取りつけてあるから
共振したらけっこう揺れるだろうけど
リレーはハンダだけで重量を支えているわけで
そのハンダも
重量を支えるには「盛りが少ない」と思うんだよね。
「通電」だけなら問題ないんだろうけど・・
なので根本的問題は
「リレーの重量固定がハンダだけなのと取付角度が垂直で振動が多い」
という
構造的なことだと思います。
で、対策として考えられるのは
ケースの垂直取付とかボルト1本による固定とかは簡単に対策できないから
「ハンダの状態を定期的にチェックする」
「リレー端子部分だけでもハンダをやり直して「盛りハンダ」にしておく。」
もっとやるなら
基板に突き出したリレーの端子部にリード線半田付けして別経路でも導通を確保して
ハンダクラックが起きても通電を確保できるように対策する。
と、いうところでしょうか。
試してみたのが上の写真の最後ヤツで
クラックは比較的根本に生じるんだから
クラックが入りやすいリレー端子部分にスズメッキ線で「ブリッジ」をかけてみた。
こうしておけば
根本にハンダクラックが入っても通電は確保できるかと。。
この対策は半田ごてを持ってれば難しくないでしょうから
試してみる価値はあると思います。
まあ、結果が出るのは数年先になるでしょうけどね。
考察
メインリレー内部の2個のリレー
片側はエンジン制御コンピュータへの通電
もう一つは燃料ポンプへの通電
な、わけですが
どちらも同様にハンダクラックが発生していますが
今まで見た事例では
エンジン制御コンピュータ側のリレーが先に通電不良を起こす方が多いようで
多くの場合
「セルは回るけど全く初爆も無くかかる気配が無く
ケースに振動を与えたら一時的に復帰してエンジンがかかり
止めて再始動しようとしたらまたかからない・・」
と、言う症状になります。
だけど上記の事例では
燃料ポンプ側リレーが通電不良を起こしたようで
正常動作中 しばらくするとガス欠したようにストン・・と止まり
しばらく放置して
おそらくは基板の温度が下がってくるとハンダクラックが狭まって通電復活
でも、基板過熱と共にクラックが開いて停電・・
と、いう理屈だったのでは無いかと思われます。
実はメインリレーのユニットはかなり高温になります。
けっこうな大電流がプリントパターンの銅箔を流れていることと
セメント抵抗も発熱するので
エンジン始動中 メインリレーを触ってみると
ケースがけっこうな熱を帯びているんです。
この熱も
ハンダの強度ダウンに影響しているのかも知れない。
この、メインリレーユニット製作メーカーはミツバですが
使われている2個のリレーは富士通製らしく
実は数年前に絶版になっているそうです。
メーカーであるミツバが
このリレーを何個ストックを持っているのか
メインリレーとしていつまで供給されるのかが気になって
色々調べてみたんですが
メインリレー故障の原因がリレーそのものでは無く
修理が可能だと分かれば
とりあえず一安心です。
このリレー
窒素封入とかじゃなくオープンエアな安物に見えるけど
実はけっこう拘り仕様の専用品らしく
実際 20年以上とかなりの走行距離を経過して接点は問題ないし
供給が止まったとしても
修理して走り続けることが出来そうです。
まあ、メインリレーは比較的安価な部品だし(初期型用で現在価格4170円)
入手できる現在においては
もし故障したら新品に交換してリフレッシュしちゃうのが最善だと思うし
「故障する前に新品交換して
動作していたメインリレーは緊急用としてトランクに入れておく」
と言うのがお勧めですね。
また、まだデータは無いから効果は不明だけど
新品を組む際に
上記みたいな一手間かけて「事前対策」をしておくのも良いのかも知れません。
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