こんにちは、TYIZです
NSXのATオーバーホールを開始しました。
T3ファクトリーを始めて早々に
近い将来ATのオーバーホールを行うことになるだろうからと
数ヶ月計画で関連の治具製作を考えて作っていました。
NSXのATオーバーホールは過去にも経験があるんですが
なにしろ重量が凄まじく(ATとトルコンで150キロくらいあるのかな・・)
ドレンから抜けきらないATFが多量に残っているし
どうにも整備性が悪いんです。
まず
重量に対応するためには・・
ATそのものをエンジンスタンドに取りつけることを考えて
30ミリ厚のアルミ板から削り出しでベースプレートを作った。
このベース ただの板じゃなくて
実は将来の拡張性に備えて設計的なギミックが仕込まれていて
ATケースのノックピン位置とメインシャフトのセンターを含め
100分台で精度を出してあります。
(数年後 この話の続きが出来ると思うんだけど・・)
そして
T3ファクトリーには2.8トンのクレーンがあるから
ATを宙づり状態にしてトルクコンバーターを外し
ベースプレートをボルト止めし メインシャフトストッパーを取りつける。
このストッパーも今回作りました。
で、エンジンスタンドにATを載せれば
ATを360度グルッと回すことが出来るわけだ。
作業台の上で力業で作業することに比べれば
これで作業性は飛躍的に向上。
ケースを開けてATを逆さにして残ったATFを抜き
次の難関は
メイン、カウンター、セカンダリーの3本シャフトを抜くこと。
NSXのATでは
この3軸にクラッチが仕込まれていて
シャフトの内部から油圧をかけてクラッチを動作させているんだけど
3軸のギアが大小で噛み合っているから
ケースから1本ずつ抜けないんです。
だから3軸を平行にケースから抜く治具を作る。
この治具にはハンドルを付けて
手で持ち上げる構造にしたんだけど、
シャフト3本はけっこう重たいし
今回はクレーンでシャフトを抜いちゃいます。
で、抜いた3本シャフトを卓上で分離するため
3本のシャフトを立てる治具「シャフトスタンドセット&セットプレート」を作る。
各シャフトの外径と長さ高さに合わせたスタンドを作って
あらかじめセットプレートでスタンドの位置を決めてプレートを外し
ここにケースから抜いた3軸を着座させる。
すると
3軸は横方向にスムーズに分離することが出来る。
うん、実に良いアイデア治具だぜ。。
抜いた3本シャフトはこの後分解してクラッチ交換するんですが
その前に
ケース側の分解を進める
実はATの分解整備でもっとも厄介なのが
この、バルブボディの整備。
作業内容としては
バラバラに分解して迷路のような油路を清掃し
フィルターやシール類を交換して再び組み立てるだけなんだけど
なにしろ
似たような部品がたくさんあるし
バネやボールがボロボロ出てくるから構造を理解しないと大間違いをしそうで怖い。
まだまだこれから
シャフト&クラッチ側の整備やバルブボディの組み立てなど
工数がたくさんあるんだけど
それらを円滑確実に行うためのアイデア治具も5個くらい用意しています。
分解までを簡単に紹介してきましたが
これは全体の作業工数としては3割にも満たない量で
NSXのATを分解整備するのはなかなか難しい
なにしろ
重量がある上に精密なので
作業が危険だし工数も非常に手がかかるから
アフター業界でこの作業はなかなか採算ベースに乗らないと思うんです
これを安全確実にクリアして迅速に仕上げるには
専用の治具を作って対応するしかないと考えました。
我ながら
機械屋と設計屋をやっていて良かったな・・と思う。
治具を考えて作ることが出来るから。
そしてクレーンが有って良かった・・
最大の敵は重量なので。
NSXはAT比率が高く
10万キロも走ればクラッチが摩耗して変速ショックが大きくなってきて
症状が進行すると自走不可能になる。
これをOHしてクラッチ交換すると
変速ショックが減って非常に滑らかに走るようになります。
今回OHしているAT車も
走行10万キロ弱なんだけど
クラッチが減って摩耗粉がストレーナーを目詰まりさせて油圧ダウンし
自走不能になった事例でした。
誰かがATの修理を確立して対応していかないと
不動車がどんどん増えちゃいますからね
でも、この作業はホントに大変なんです。。
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