クラッチの踏力
つまりはペダルを踏んでクラッチ操作する時の重さですが
いつか、これを数値化してみたいんだよな・・と思っていて
計測器を探していたんだけど
amazonnで良い物を見つけた。
乾電池で使えるデジタル式の引っ張り秤 なんと800円くらいで買える。。
届いたので
さっそく分解して仕組みを見ると
鉄の平板にロードセルを貼り付けてあって
これをL型の金具で引いて変形させて
変形量から荷重を計測しているようだ。
なるほど・・基板もシンプルで簡単な仕組みだけど
液晶パネルはバックライト内蔵だったりとよく出来ている。
これが千円以下で買えるのはスゴイ。
だけど配線の半田付けが酷くて
軽く線を引っ張ったらポロッと外れちゃった。
こういうのが 故障が多い・・とかの評価になってるんだろうねぇ。
で、このセンサー部分を
屈曲とテンションに強いロボットケーブルで延長して外部に取り出す。
配線延長して動作確認してから
センサーが圧力方向を計れるように改造する
4ミリの鉄板の間にセンサー部を仕込んでスポンジで巻いて完成。
試しに2リットルの水入りペットボトルをセンサーに乗せてみると
約2キロの表示 ほぼ正確だね。これは使える。
このセンサー部をクラッチペダルに乗せて足で踏むと
液晶パネルにその時の荷重が表示される。
うん、狙い通り。
クラッチ操作の重さって
ペダルに足を乗せてグッと踏み込んでいくと
だんだん重くなってピーク荷重になって
これを越えると少し軽くなって
踏み切ったところから少し戻したところが
クラッチミートで発進直前の左足の待機位置となるわけだ。
だから
操作する時に「重!」と感じるのはピーク荷重に向かっていく過程な訳で
実際の操作時の半クラッチの操作性は
ほぼ踏み切った「待機位置」での荷重が大きく影響するんだと思う。
なので
ペダルを踏んでいく過程の「最高荷重」の数値と
踏み切って少し戻して「待機」している状態の荷重を
クラッチが異なる数台のNSXで計測。
結果
純正クラッチ新品
最高 12s
待機 8s
純正クラッチ だいぶ消耗(残量30%くらいか)
最高 16s
待機 10s
T3仕様OSツイン 低圧着
最高 10s
待機 8s
T3仕様OSツイン 高圧着
最高 20s
待機 14s
やはり、いつも経験している予想値を裏付ける結果になった。
簡易的なセンサーによる計測だから数値の正確性は疑問だけど
同じ計測器で連続で複数台計っているので
比較としては正確でしょう。
クラッチというのは
ディスクが消耗するとペダル操作は重くなってきます。
これは ディスクが薄くなっていくと
クラッチカバーのダイヤフラムスプリングが起きてくるため
レリーズフォークなどの角度が理想点から外れてきて
てこ比と効率が変わってくるためですが
多数のNSXを扱っていると
クラッチ操作の重さで ああ・・残量50%くらいかな・・
と言うイメージが分かるようになってきます。
とはいえ
これを数値化したことが無かったので
お客さんに「クラッチが重いよ」を分かってもらうには
コンディションが良いNSXのクラッチを踏んでもらうしか無かったんです
クラッチ操作は使っていて徐々に重くなってくるから
自分のNSXのクラッチ操作が
どのくらい重いのか気づいていない方が多いわけですね。
上の例で
純正クラッチの新品は 最高12s 踏み切った待機で8s
これがだいぶ消耗していると 16sと10sになってきます。
乗ってみれば両者の差は歴然で
混雑した道での左足の疲労感はまるで異なります。
ただ、このくらい消耗していても
まだクラッチが滑るのはだいぶ先で
おそらく クラッチディスクの厚さは限度値以上あるんだけど
操作性がすごく悪化してきているので
完全消耗して滑る前にこの辺でクラッチをOHすると
すごく快適になるよ・・と言うわけです。
T3仕様OSツイン 低圧着は
やっぱり純正よりも操作は軽くて
踏み切って待機しているときの荷重は純正と同じくらいだけど
踏んでいくときの最高荷重で2sほど軽く
かつ、ペダルストロークの間に最高荷重になる範囲が狭くて
重いポイントを超えるとすぐに軽くなる。
これが体感での操作の軽さになっているんですね。
T3仕様OSツイン 高圧着はさすがに重く
最高20s 待機14sだから
これは競技用のクラッチです。
ただ、ペダルの踏力変化は低圧着同様滑らかだから
サーキットなどで高回転シフトを繰り返すにはGoodなフィーリングなんです。
上のリストには入れませんでしたが
重くて操作性が悪い某メーカーの強化クラッチも計ってみました。
最高20s 待機18s・・
これはかなり辛い
特に
最高値の20sが ペダルをほぼ踏みきった位置にあって
発進時には
左足で20sの反発をこらえながら操作する必要があるわけです。
このクラッチを踏んだあと
T3仕様OSツイン低圧着を踏んでみると快適性の違いに驚く・・
(踏み切った状態の荷重が半分以下だからね)
クラッチは
人間が操作するモノだから
ペダルを踏んだときの快適性というのはすごく重要なんです。
そのため
ペダルストロークの間で
最高値と待機時の踏力は上手く変化を付けるべきで
これを上手く設計すれば
圧着が高い競技用のクラッチでも快適に扱えたりするわけです
その点 昔から思うけど
OS技研のクラッチカバーの設計は非常に良く出来ています
大パワーのチューニングカーに使う競技用の強化クラッチでも
操作は重いけど OS製は街乗りできちゃいますからねぇ
T3仕様OSツインは
伝達力の強化目的じゃなく
メタルディスクの摩擦係数に依存してクラッチディスクの直径を小さく軽くして
シンクロの負担を減らし
素早いシフト操作でのギアの入りの良さを求めています
こんな特注を受けてくれるのも
OS技研ならではなんですねぇ。
クラッチの消耗とペダル踏力の変化ですが
純正クラッチは
構造的に消耗に伴うペダル操作の重さ変化がすごく大きいんです。
だから
2〜3万キロも酷使すると新品時よりも操作が重くなったのが分かっちゃう。
(もちろん使い方と消耗度合いに寄りますけど)
対してOSのメタルクラッチはこの変化量が少ない。
だいぶ使い込んだTYIZ号のペダル踏力も計ってみましたが
最高 11s
待機 8s
ということで
新品に比べると 踏み込んでいく過程の最高荷重は1キロほど増えてたけど
待機荷重はほぼ変わっていませんでした。
OSツインは操作の軽さが長期間続くんです。
これは
クラッチディスクの新品時の厚みと消耗量変化の違いによるものですが
この、長期間操作性の良さが続くのもOSツインの良いところで
夏休みにミッション降ろしたとき
純正クラッチに戻そうかな・・と思いつつも
もう一度OSツイン使おう。
と、思い至った理由のひとつなんです。
そんなわけで
クラッチの操作性にはいくつかのポイントがあるわけですが
今回は重要なポイントのひとつ
「操作の重さ」に関して検証してみた次第です。
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