先日
ブレーキ球切れ警告の点灯で修理依頼入庫したNSXで
「時々有り得る」トラブルがあったので紹介。
NSXのメーターにあるブレーキ球切れ警告灯というのは
ブレーキランプの電球に弱い電流を流し
フィラメント経由でアースに落ちている
(つまりはフィラメントが切れていない)ことを検出しています。
(だから抵抗値が大きいLEDにしたりすると警告灯が点く)
メーターの中の基板には検出結果に対して警告灯を点ける回路があって
その、検出するセンサーがテールランプユニットの中に入っています。
「フィラセンサー」という部品名だけど
中身はコイルとリードスイッチを組み合わせたリレーで
ブレーキを踏んだとき(つまりフィラメントに+12Vがかかったとき)
アースに落ちているという条件から外れてしまうから
フィラメントへ送る電流をコイル経由で流すことで
中心に仕込まれたリードスイッチをONにさせて
球切れ警告の検出信号がアースに落ちている条件を維持する
と言う仕組みです。
で、このフィラセンサーは右用と左用があって
メーターからの検出配線は右テールを経由して左テールに向かっています。
だから
右のフィラセンサーには左へ信号をバイパスするためダイオードが入っているんだけど
フィラセンサーは右用も左用も外見がそっくりだから
間違えて組まれている車輌が時々あります。
こんな構造だから
滅多に故障することはないんだけど
ブレーキ球切れ警告灯が点いたので
とりあえず、フィラセンサーを交換してみよう・・というパターンは多く
その時に
左右のフィラセンサーを間違えて組んでしまうと
メーターの基板が正常になっても
球切れ警告灯が消えない・・と言う現象が起きます。
ちなみに
左右を間違えて組むと
ブレーキを踏まずにキーONにした場合 球切れ警告灯は消えない
ブレーキを踏んだ状態でキーONにすると
ブレーキを踏んでいる間は警告灯が消えて ペダルを離すと警告灯が点く
と言う症状が起きます。
これは、左用にはダイオードが入っていないためで
ブレーキを踏んでいる間はリードリレーが繋がるので警告灯が消えるんです。
で、今回のNSX
球切れ警告灯が消えないので当然メーター側だろうな・・と思って
メーターAssyを外して検証機に繋いでみると
その時点ではちゃんと消えるんですねぇ。
まあ、基板腐食が原因で
症状が出たり消えたりするのが良くあるパターンだから
これが、
メーター単体での修理依頼だったらそのまま分解して作業開始するんだけど
ちょっと違和感を感じて
何かおかしい・・ホントにフィラセンサーが故障してるのかな?
原因は車輌側にもありそうな気がして
とりあえず右のテールランプを外してフィラセンサーを開けてみると
やっぱり左用が組まれていた。
ということは左ランプに右用フィラセンサーが入っているのかな?
と思って左テールランプを外してみたら
こちらにも左用が入っていた・・
どうやら過去に
警告灯が消えないからフィラセンサーを交換したんだけど
左テールのボルトが錆びて固着していたので右だけセンサー交換した様で
その時にセンサーは左右用意していたんだけど
右テールに左センサーを組んでしまった・・と言う事みたいでした。
右のフィラセンサーを交換して繋いでみると
ブレーキ球切れ警告灯は消える様になったのでまずは一安心。
だけど、そもそもフィラセンサーを交換するきっかけというのは
球切れ警告灯が点いていた時期があったと言うことだから
メーター側も無事では無いんだろうから
引き続きメーターを分解して基板修理。
予想通り
液漏れと腐食がかなり進行していて
基板に息を吹きかけて通電してみると警告灯が点く。
ブレーキ球切れ警告灯の点灯は湿度の影響を受けます。
コンデンサーから漏れた電解液が基板を腐食させて
そこにホコリと湿気が重なったとき
基板がショート状態になって警告灯に電流が流れてしまうようで
朝 エンジンをかけて警告灯が消えないな・・と思いつつもしばらく運転して
エンジンを再始動すると警告灯が消えている。
と言う現象が多いのは
通電により基板温度が上がって湿度が飛ぶためだと思います。
だから
湿度が低いこの季節は警告灯点灯に伴うメーターの修理依頼というのは減少し
夏場に集中するんだろうなぁ・・
と思うんですよね。
そんなわけで
複合原因だったけどこのNSXは完治。
もし、同様の症状で悩んでいる方がいたら
フィラセンサーの左右間違いを疑ってみても良いかと思います。
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