エンジン不調で預かったType-S
クラッチもミッションも不調で
エンジンをOHしている間にミッションも分解してみる。
開けてビックリ・・
内部の鉄部品に真っ白な粉がこびり付いている・・
実はこの現象
過去にも見た事があって
もしかしたら
なにか、ギアオイルへの添加剤でも使ったためなのかも知れない。
この白い粉が潤滑性能を有しているのかは分からないけど
ギアの歯面とかベアリングの摺動部とか
金属接触している部分には定着していないから
コーティングの意味を持たせた添加剤だとしたら無意味でしょうね。
それよりも
固い粉末が剥離してベアリングに噛み込むと
ゴロゴロしちゃって組み立てたミッションの起動トルクが分かりづらい・・
なので
ベアリングはフル交換しつつミッションOHを進めていく。
シャフトにも粉が積もって抜けなかったり
とにかく迷惑・・
NSXのミッションは
走行するとオイルポンプでシャフトの中にオイルを流し
シャフト内部から変速クラッチやベアリングに給油する構造なんだけど
ヘドロ状に固まった白い粉がシャフトの中まで目詰まりさせているから
潤滑不良を起こしていたんだろうなぁ・・
再使用するギアやシャフトなどは
全て超音波洗浄機に放り込んだら見事にキレイになった。
そしてこのミッションには
OSのLSDキットが組まれていたんだけど
これが驚きの改悪がしてあった・・
OSのLSDは
他メーカーの機械式LSDに対して
画期的なアイデアをいくつも盛り込んであるんだけど
最大の特徴は
内部のカムが開かないようにスプリングで縛っている構造。
機械式LSDのメリットは
クルマがコーナリング中
左右輪に回転数の差が生じている状態で
アクセルを開けて駆動力をかけると
内部のカム機構が左右に仕込まれたクラッチを押すので
左右輪の回転数をロックする方向に作用するため
荷重が抜けた内輪のホイルスピンを防止出来るから
ヘアピン立ち上がりみたいな
低いギアでフル加速したい時に大きくアクセルを開けられるので
コーナーリング脱出速度が格段に向上すること。
だけど
たとえば4速以降の高速コーナーや
大きくアクセルを開けずにストリート走行しているときなど
LSDが効いちゃうと駆動力のロスになったり
ガリガリというチャタリング音に悩まされる事になるわけで
これを回避するために
カム機構が開かないように
スプリングで縛るというアイデアを盛り込んでいるわけです
これはOS技研の特許技術で
初代社長のアイデアらしいけど
それまで
競技用部品だから・・と異音などは諦めていた機械式LSDを
ストリート走行でも違和感が無いレベルの
身近なチューニングパーツにしてくれて
且つ、高速コーナリングでの走行抵抗を減らすという
相反する要素を
「機械構造」でクリアしてきた点が画期的だった。
なのに今回のType-Sでは
その、OSの美点である縛りスプリング機構が撤去されていた・・
いや、縛り機構を撤去すれば
作動条件は普通の機械式LSDに近くなるわけで
初期の効きは強くなるかも知れないけれど
500キロ近い荷重で縛られていたカムがフリーになったら
LSDの効き方は設計時の想定とは大きく異なってしまうわけで
また、セッティングで一苦労すると思うんだけど・・
今回は
ストリート走行メインの快速Type-Sを仕立てる計画だから
LSDは通常仕様に組み替えます。
それにしても
このType-S
改造内容から思うに
ジムカーナ競技にでも参戦するために手を入れていた気がする。
でも、ろくに競技参戦を行う前に不具合を抱えて
手放されたんだろうか・・
せっかくウチに入庫してきたんだから
快適で快調な状態にしてオーナーの元に帰そうと思っています。
あと
昨年OS技研に製作依頼した4.4ファイナルLSDキットは
30台以上予約をいただいていて
ほとんどが6速なんだけど
今回は5速用も少数作ることにしました。
毎度 製作進行が遅いんだけど
仕上がってくれば
また、ミッション作業で慌ただしくなりそうです。
そのくらい
NSXチューンに対して
OSの4.4ファイナルLSDキットは劇的効果なんだけど
次ロットの完成が見えた頃
また、このキットの面白さを紹介してみようと思います。
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