HNU14ノーマルSR20DE分解

今回のチューニングメニューでは 目標ブーストが1.2以上であるためと
ピストン裏へのオイルジェットやタービンオイルインアウトの関係から
HNU12用のSR20DETターボブロックを使い、
ヘッドは設計の良さそうな後期モデルであるHNU14用の物を使います。
調べた結果 U12の方がポート形状はターボ向きであることがわかったが、
冷却水配管 アイドルエアコントロール等が U14の方が不安がない構造であること
また、エンジンルームの狭さ及びコンピュータハーネス等の関係で
やはりU14のヘッドを使うことにした。
さらに、今回のコンセプトである実用域の扱い安さを最優先するため
NA領域のトルク確保も考えて NA用のU14ヘッドを選択。
ミッションは 強度及びギア比の良いHNU13用を使うため
ノーマルのエンジンマウント位置と変わってくる。
このマウントを作るために U13ブロックとミッションを組み合わせて治具にします
そのためにU14ブロックは作業性向上のため軽量化をかねて分解。
でも、意外な新事実が発見された。


クルマから降ろしてミッションとトランスファーを外せば
一見普通のSRエンジン。
でも、シルビア系と比べると吸気側のポート形状が大きく違う
また、ヘッドカバーはHNU12に比べると異様に盛り上がっている。
このヘッドカバーの中身も気になったのだが、
何のことはなく ブローバイのセパレーターがしっかり作ってあるだけだった。


ヘッドカバーをあけると 見慣れたSRエンジン・・・ でもなんか変?


なんとローラーロッカーアームだ!
NAエンジンであるため 徹底したフリクションロスの低減を目指しているのだろう。
だが、このロッカーは重量的に重く、高回転を狙うには無理がある。
このクルマののレッドゾーンが7000rpmに設定されているのは
おそらくこのローラーロッカーの重量から来るサージング対策だと思われる。
また、通常のSRエンジンにあるカムにオイルを供給するオイルパイプが無い。


今回はリミット8000rpm位を狙うため
ロッカーアームは普通のソリッドタイプに変更する
それ以外は特にポート等は加工せずにこのヘッドを使う。
ちなみに、インマニ取り付け位置が異なることで ポートの曲がりは急で
ラッシュアジャスターの逃げがポート内部に突起するため
パワーの点で理想的にはシルビア系のSRエンジンの方が良いと思われる。




ブロックは単品になるまで分解して軽量化。
でも、このブロックは最終的に使わないので処分する。


クランクとオイルポンプ これらは使わないのですぐ処分。


NA用のピストン。
燃焼室の窪みがターボ用に比べると浅い
これが圧縮比の違いになるのだろう。当然このピストンも使わない。

HNU12 ノーマルSR20DET分解
HNU12ぶるぶる号は走行距離 約20万q
エンジン内部の変化が気になったが、
非常に程度は良好に見える。
オーナーの管理の良さが見えます。
それと同時に SR20DEの耐久性の高さが確認できる。


横置きSRエンジンも 補機類を外してしまえばよく見るSRエンジン
このエンジンはブロック側を使うので 慎重に分解。
手前に見えるのは排気ポート。
この位置関係はU14のSR20DEも共通であった。
従ってエキマニ、タービン等は HNU12で使っていた物がそのまま組み込みできる。
ブロックはこれを使うので
タービンへのオイルインアウト冷却水配管まですべてボルトオン。


これが普通のSRエンジン
ソリッドロッカーアーム仕様には
カムとロッカーアームの接触面にオイルを供給するパイプがある。
カムの上に通っている曲がったパイプにはカムに向けて穴があいていて
ここからオイルをカムとロッカーアームの摺動面に供給している。


オイルパイプには、カムを固定しているブラケットを通して ヘッドからオイルを供給される
調べたところ U14のヘッドにこのパイプは流用可能
このままよく洗浄してU14ヘッドに組み込む。


U12のSR20DETブロック。
ブロック側の状態は 走行距離なりのカーボン蓄積量。
でも、乾いたカーボンで拭き取ればパリパリ取れる。
シリンダーの状態は非常に良好。
上死点でピストンのガタ付きもなく まだまだ走れそうだ。


ここで、U14のブロックにU12のヘッドガスケットを重ねてみた。
やはり、ぴったり合う。油圧&冷却水通路もまったく同じ。
従って U12ブロックとU14ヘッドの組み合わせは問題ないことが確認された。


使わないけれど、U12ヘッド側の状態
やはり、カーボンは付着しているがこれもウエスで拭き取るとほとんど取れるような
乾いたカーボン。
それにしてもこんなにもろいカーボンが
エンジン回転中に剥離して飛んでいかないのが内燃機関の不思議。


越下の分解
クランクシャフトのメタルは非常に良好。
まだまだ問題なく走れそうだ。
ブロックの内側の黄ばみも走行距離の割には少なく
オーナーのオイル管理の良さがうかがえる。


問題があったのは コンロッドのメタル
走行距離なりではあるが、一番力の掛かる箇所が摩耗している。
これは4気筒すべてに関して同様であったので 寿命なのかもしれない。


分解風景
いい天気だったので 表で作業。


これはシリンダーを下から見たところ。
ピストンの裏に向けてオイルを噴射するノズルが見える。
このノズルがNAエンジンには無い。
今回U12のDETブロックを使うのは このオイルジェットが有ることと、
タービンのオイルインアウトが有ることが選択した理由。

HNU14用SR20DET 製作記

U14のSRエンジンは初めて作業するため
不明な点が多い。ローラーロッカーに伴って通常と異なる点がある。
現物あわせで調べて対策していく。


U12のシリンダーブロックに打痕を発見
こういった凹みはノーマルガスケットでは問題ないと思われるが
今回はメタルガスケットなので ボーリングと共に修正面研する事にした


U14ヘッドを分解する。


バルブスプリングは東名の強化品に変えるため使わない
ラッシュアジャスターは新品に交換。


これは排気バルブ。 写真上2本が新品のターボ用 お菓子のような包装だ。
ステムの太さがNAは6o ターボは7o
でも、それ以上に長さが違うことが発覚。
長さを測ってみると 吸気、排気とも3ミリ違う。
バルブの直径は同じであるため バルブシートは使える。
今回はシートカットと摺り合わせで仕上げる。


バルブの長さの違いは
ロッカーアームの違いから来るものだった。
ローラーロッカーは厚さがあるためバルブ長が短くなる。
今回はソリッドロッカーに変えるので吸排気ともバルブは交換。
バルブガイドも打ち直し&バルブシートカット。
上の写真はロッカーアームを2種類乗せて
バルブを変えてカムとのクリアランスをチェックしたときのもの

ところが、バルブガイド打ち替えで排気側に問題が発生。

ターボ用のφ7バルブのガイドは外形φ11 NA用のφ6バルブのガイドは外形φ10
ヘッド側の穴加工は非常に困難 NA用のガイドを追加工するとステムシールが使えない。
今回は排気側バルブガイドをワンオフ製作する事で対策。
結果的に バルブガイドは吸排気ともリン青銅ガイドになった。
今回の仕様にはオーバースペックであるが、純正が使えない以上仕方がない。


今回は右のソリッドロッカーに交換。
フリクションロスはローラーに比べて大きいが
軽量であるため 高回転が可能。
バルブを押すフォーク部からカム接触面までの高さが異なる。
これがバルブ長さの差につながっている。


今回 SR20のウィークポイントであるロッカーアームにWPC加工を施した
これは摺動抵抗低減 疲労強度向上等に効果がある。
ハードショット加工の進化版のような物。


今回使うのは 東名の鍛造ピストン φ87.5。
本当は φ87をオーダーしたんだけれど、納期未定であったため
SRエンジンとしては最大口径の87.5に決定。
まあ、これ以上のボーリングをすることはないであろうし、
次回シリンダーにトラブルが発生した場合には シリンダーブロック交換だ。
ノーマルはφ86 今回70ccほど排気量は増えることになる。
この排気量アップがどの程度効果があるか何ともいえないが 通称2.1仕様だ。
このピストンにあわせてシリンダーをボーリングすることになる。


曲がり修正&バランス取りから帰ってきたクランクシャフト。
ウェイトの部分が所々穴あけされている。
今回 曲がりは5/100で限度値には入っていたけれど
安心して高回転を回すために修正した。


面研&ボーリングから帰ってきたシリンダー。
さすがに無傷でピカピカ。
ボアはノーマルの86から87.5になった。


シリンダー切削カス等が入っているため
ホワイトガソリン&エアーで洗浄する。


ピストンをコンロッドと組み合わせる。
さすがに今回コンロッドはノーマル。
もちろんメタルは新品だけど。


クランク、ピストン 腰下を組み立てる。



これが 今回一番問題になったバルブガイド。
今回 ブロックはHNU12のSR20DET ヘッドはU14のSR20DEを使う。
NA専用のSRエンジンヘッドは排気バルブがソリッド。
ターボ用は冷却性に優れたナトリウム入り。
今回 ローラーロッカーをやめてソリッドロッカーアームにするため、
バルブはターボ用を使うことにした。
ターボ用のバルブはステムが7o NAは6o
従ってガイドが合わない。
シリンダー側の穴径もNAは10oターボは11o
対策として ターボ用のバルブガイドを加工してシリンダー側に合わせることにした。
こうすれば バルブステムシールもターボ用が使える。
インテーク側はノーマルでも良かったが、
せっかくなので両方ともリン青銅削り出しで製作した。

ガイドに合わせてシ−トカットをして バルブを入れて摺り合わせして完成。


無事 SR20DETブロックにSR20DEヘッドが載った。



カムの上に通っているのが オイル供給のパイプ。
U14のローラーロッカーSR20DEにはこれがなかった。
このパイプはSR20DETからの流用。


ところがヘッドカバーを乗せる段階で問題発生。
今回 U14のヘッドカバーを使う予定だったが
乗せてみるとオイルパイプがヘッドカバーの内側に当たって閉まらない・・・
加工してみたが 大当たりらしく逃げるのは難しい。
せっかく塗装して仕上げてあったのだが U12用を使うことにした。
それでも ヘッドがU14用であるため 一部加工して取り付けることになった。
この際 ヘッドカバーの塗装はあらためて行おう。


NA用に最適化されていたサージタンクは
ターボの強制過給に対応するため大幅に削り込んで形状を変えた。
自然吸気ならサージタンクの中にファンネル形状で良いと思うが、
ターボの場合エアを押し込むので
引っ張りやすい形状から押し込みやすい形状に変えたつもり。
効果のほどは疑問だが チューニングは積み重ねなので。。


補機類の取り付けを始める。
エンジンらしくなってきた。


また問題発生
今回 オイルクーラー取り付けと共に エレメントも移動する。
ブロックに取り付ける 純正部品のエレメントベースを今回はHNU12用を使用。
この部品はU12用の方が凝っていて エレメントが詰まったりトラブルがあったとき
オイルをリリーフさせてエンジンへのオイル供給が止まらないようになっている。
ところがこの部品がインテークマニホールドに干渉する。
両方を削り込んで 穴があいたら溶接して埋めて修正。
意外なところで苦労する。
しかし、おかげできれいに収まった。


エンジン本体にはおよそ補機が取り付けられた。
これから ミッション&トランスファーと組み合わされて
車輌に搭載される。

エンジン完成搭載編に続く