フロントフレーム修正 再修理

アライメント調整しても走向不安定が解消しないというNSXで
フレーム修理依頼でした

この車輌は購入時から修復暦はあったんだけど
明らかに左フロントタイヤが後方にズレていて
何らかのダメージが残っていることは分かっていました。

トーやキャンバーのアライメント数値を合わせても
左右ホイルベースの差やフレームのネジレがあれば
左右輪の接地荷重が変わってくるので直進性も出なくなってきます

今回はフレームの再修理のみで外装の補修は行わない方向で作業

サスペンション取り付け部が正常な位置に決まった後 潰れて変形していたフレーム断面を正常な形状に戻し
切除してあったフレーム先端部分を再び溶接して形状を戻し 修理したところはキレイに修正して仕上げていく

左フレームの長さを伸ばす方向に修正するので
フレーム先端部分を引くために
一部部品を切断してクランプがつかめる様にする
このパネル部品は修正後 再使用する。

フロントのフレーム状態が分かるまで分解してみると
左フレームが上方向に変形していて
フロントガラス下 カウルトップ部分と
ラジエターコアサポートで水平が2度くらいズレているのが分かる。

分解前に暫定で計測してみたところ
右フレームは軽度の変形だけど
左フレームが短縮しつつ右に振りつつ上方に大きく変形していたから
過去の事故では
左タイヤホイルを含めて大きな衝撃が有っただろうことが予想できる。

本来なら
外装を治す前に内板骨格をしっかりと治すべきなんだけど
それを行わずに外装だけ治してしまっていたため
走行性能が戻らない固体になってしまっていたようです

サスペンション取り付け部でフレームが2センチ以上変形しているから
左右タイヤの接地荷重がだいぶ異なっていたはず。

左フレームは後に詰まる方向にも変形している
フレームと共にサスペンションアームも変形していて これが左フロントタイヤが後方にズレていた要因でしょう。
フレームを治さなければ正常なサスペンションアームは組めないだろうから
フレーム修理とサスペンションアーム部品交換を同時に行う必要があります。

フロント回りを分解し
リフトアップした車輌の下に
フレーム修正機「セレット」のベースを設置する

セレットにNSX専用治具を取り付けて車輌を載せて
サスペンション取り付け部やフレームの位置決め穴に対して
全ての位置決めタワーが合う様に
3次元的にフレームの位置修正を行っていく。

左写真はフレームを下方修正しているところ
こうして
油圧で引きながら伸ばしたいところをハンマーで叩き徐々に修正していくのは
職人芸が要求されます

上下方向を修整したあと
フレーム先端をクランプし
座屈で奥へ向かって変形したフレームをチェーン&油圧で引いて修正していく
このときもセレット治具の位置決めピンが合うところへフレームを導いていく

調整途中
フロントキャンバーは
フェンダーとの関係であまり起こせないから1度
リアキャンバーは限界まで起こしても3度半
トーはフロント0 リアは4ミリに調整していく

正面から見た
修正前後のフレームの様子
修理前は左フロントが上がっていたのが分かる。
修理後はフレーム位置もコアサポート高さも水平になった。
過去に この車輌を修理した業者はこの修正をせずに外見のみを修繕してしまったため左右輪の接地荷重が大きく異なって
走向不安定になっていたと言うことです。

フレームの修理を行う際には
事故を起こした直後の状態から見る事が出来れば
外装の破損状況から
フレームやサスペンション関連へのダメージが予測できるけれど
今回の様に外装が修繕されてしまっている状態からだと
分解計測から行うことになるため
フレームは修正で治せるのか?それとも大きなフレーム部品の交換が必要になるのか?
作業を進めてみないと判断が出来ないため修復難易度と費用が読みにくくなります
大きく破損したNSXのボディ修理は
後で後悔しないためにも経験と技術のあるファクトリーで行いましょう。

コアサポートやフロントフレーム先端部品を外してみると
フレームの断面が潰れているのが分かる

フロントを大幅に分解作業するため
外装部品と共にサスペンションアーム部品などを全て外す

ヘッドライト取り付け部もフレームに合う様修正して溶接  アルミ地が出てしまった修正部分は剥離しにくいエポキシ系サフェーサで下地処理する

すでに外装が治っているNSXでフレーム再修復作業の概算費用は
外装やハーネス ラジエター、コンデンサー
サスペンション関連の分解とおよその変形計測 修正が可能か不可能かの判断(修正不能の場合 一部フレーム部品交換になる)
再び組み立てる費用でおよそ30〜40万円
フレームの再修正費用と最小限のパネル部品類でおよそ40万円
だから80万円近辺を見込んでおけばフレームの再修正は可能と言うことになります。

今回の車輌では
変形していた左サスペンションアーム部品の交換と
老化していたエアコンコンデンサー&ラジエターなどの部品を総交換したため総額で130万円ほどの予算になりました。

それでも
外板パネル類の交換や塗装作業が無かったのでこのくらいの金額で収まったわけですが
作業難易度と交換部品次第で修理費用は大きく変わってきます。


NSXのアルミフレームは非常に強固で 修正の際に鉄素材に比べてスプリングバックが大きく 
正確な位置修正には専用の治具が必須だから
設備も技術も無い業者が外見だけ治してしまったため内部ダメージが残ったままの車輌が多々有ります

今回のNSXは
修復歴のある車輌を長年乗っていたオーナーが
正常な状態に戻してNSXに乗ってみたい ということで再修理作業になったわけですが
実は世の中に 完治していなくてフレームにダメージを負ったままのNSXはたくさん有ると思います。
車輌価値が見なおされて 本当にこのクルマが好きなオーナーが増えた現在
過去歴を修復して正常化したいという需要は今後増えてくると思われます

フレーム関連の部品もメーカー欠品が多くなっていますが
補修部品と設備&技術があれば再生は可能です

ボディやサスペンションで気になる事がある方は お問い合わせいただければと思います。

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サスペンションや外装組み立て後アライメント調整を行う
オーナーの希望でかなり車高が低い状態だからリアキャンバーが起きないけれど
その他の数値は極めて良好で 左右ホイルベース差は2ミリ程度に収まって
フレームとサスペンションの状況は全て適正値に治りました。

今回は
フレーム修正の分解作業ついでに
エアコンコンデンサーとラジエターは新品交換しました。
放熱器は消耗品だし
エアコンのガス配管は脱着に伴ってガス漏れが発生しやすくなるのでこの機会にガス配管を含めて新品交換。
コンデンサーを新品交換すると
あきらかにエアコンの効きが良くなります。

今回のNSXは元が赤で黒オールペイント車輌だったため フレームは黒に塗装していく