お客さんのNSXで
セルモーターが回らないトラブルが発生しました
症状は エンジンルームでカチっと言うが セルが回らない
バッテリーはそれほど弱っておらず、最近セルのみ回りが悪かった と言う。
ブースターケーブルでエンジンのかかっているクルマと繋ぐとセルが何とか回りエンジン始動出来る
調べてみると、原因は意外なところにありました。
まずは原因の調査から。
エンジン回転中 オルタネーターの端子電圧とバッテリーの端子電圧を測ってみる
数カ所測ってみて大きな電圧降下は無いのでアース不良等はなさそうだ。
エアクリーナボックスを外してびっくり
クーラントがかなりこぼれている。 サブタンクから吹きこぼれた物でした
それにしてもこの量はすごい 濃縮クーラントになっていてベトベトドロドロ。
気分は川底のヌメヌメした石の様だ・・・ まあ、クーラントだから錆ないだろうけど。
タンクの真下にあるのがセルモーター。
とにかくセルを外す。
セルモーターはミッションにボルト2本で取り付けられている。
大電流が流れるため バッテリーから直に12ボルトが常時かかっていて
スタータースイッチを入れたとき 内部ソレノイドスイッチを動かすための
コネクターがある。
外したセルモーターASSY
さわりたくないくらいヌルヌルベトベト・・・
これは常時12ボルトが接続されているターミナル。
原因は何かハッキリしないが、電蝕している。
クーラントがかかったためか、かつての作業時に締め付けが甘かったのか。
電圧の高いエンジン回転中の車輌とブースターで繋いだ場合
この抵抗を越えて辛うじてセルが回っていたのでは??
いずれにせよこれが抵抗になって、セルが重かったんではないかと思われます
腐蝕したターミナルは ダイスでネジをきれいに修正。
車輌側のハーネス等もきれいに修正。
モーター部分を分解してみる
今回 まず疑ったのはモーター内部にクーラントが浸入ているのでは??
だったんだけど、しっかりパッキンでシールされていて浸入した形跡はない
せっかく分解したので安価なブラシホルダーは交換した。
4個のブラシのうち2個はヨーク(右の黒いモーターの胴体)と一体で
単品購入できず けっこう高価。 本当に寿命でOHの場合は要交換。
でも、今回摩耗は20%位なので そのまま使った。
ギア側を分解する
NSXのセルはアイドラー付きリダクションタイプ。
いつも思うんだけど メーカーによって構造がまちまちで実におもしろい。
こちら側は金属接触のみでゴムシールは無いので
クーラントが浸入した形跡がある。
これはソレノイドスイッチ側。
しっかり防水してあるので問題なし ターミナルの摩耗はあるけれど
まだ許容範囲だと思う ターミナルをペーパーで磨いて再使用。
ところで この構造はけっこうおもしろい
下の写真で右下に見えるのがスターター信号を入れるターミナル。
ここに12Vがかかると内部の電磁石が鉄芯を引き込む。
鉄芯から伸びている棒がギアを押して スターターピニオンが飛び出して
フライホイルのギアに噛み込む。
また、鉄芯の根本に付いた銅の円盤が左右のターミナルに接触して
常時電源12Vをモーターに流す セルが回ってエンジンがかかる。
ケースとギアを洗浄してグリスアップして組み立てる
ところで このグリス
良い物を使いましょう 私は以前あるメーカーの物を使ってひどい目に遭いました
今回は信頼しているOBERONのグリス。
そんなわけで組み立て完了
後は元通り車輌に組み込む。
ところで、クーラントが漏れた原因ですが
実はサブタンクのようです
最初はキャップだと思い新品に交換したのですが
エンジンをかけておいてクーラントの圧力が上がると
プラスチックのタンクとキャップを取り付ける真鍮の金具の隙間から
クーラントがにじんできます タンク交換が必要なようです
また、これまで付いていたラジエターキャップも要交換でした
NSXの純正キャップは上記写真のように加圧部のバルブパッキンに
シリコンゴムが使われていますが
ベースパッキンは普通のネオプレンゴムのようです
この写真は新品のキャップですが それまで付いていた物は
ベースパッキンが大きく変形してベロベロになっていました。
やはりキャップは定期的にチェックして出来れば1年くらいで交換した方が良いと思う。
ちなみに、NSXのキャップはは何度か品番が変わっていますが
初期型品番で注文しても 最終型品番で届きます だいたい\1300位でした。
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