NA1-NSXの5速ミッションにはどうやら3種類存在するらしく、
国内向けクーペ、Type-R、輸出向けアキュラNSX 仕様があります。
各仕様とも車輌の性格に合ったギヤ比であるため「これが一番優れている」とは言えないのですが、
普通に走るならクーペ サーキット等であればType-R まっすぐな道を流すならアキュラ といった感じでしょうか。
問題のアキュラ仕様は 2.3.4速が上がっていて、国内仕様から乗り換えると
2速以降であきらかに車の重さを感じます。
これが全ての点で悪いわけではないのですが キビキビ走らせる上ではマイナスポイントになります。
各ミッションの相違点は
クーペとType-Rは変速比(1〜5速)は同じでファイナル(減速比)が違う Type-Rは加速仕様
クーペとアキュラではファイナルが同じで 変速比の2.3.4速が違う アキュラは巡航仕様
従って、アキュラのミッションをクーペの物と交換しても大きな効果が得られますが
どうせなら変速比、減速比ともType-Rにしてしまえば 加速の点で大きなメリットがあります。
今回のお客さんは サーキット走行が好きな人であるため これと合わせてLSDもType-R仕様にしました。
この変更を行うことにより アキュラNSXは見違えるほど加速レスポンスが良くなり、
NSX本来の加速が得られます。
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基本的にLSDは全車共通構造であるため
LSDに関してはLSD作業のコーナーにアップしてあります。
まずはミッションを降ろす。
今回は時間がかかりそうだったので ミッションを降ろした後足回りを組み立てて
押して動かせるようにした。
今回の車輌はエキマニが変わっているため
エンジンが大きく傾かず、作業性が悪かった。
クラッチは今回OSツインプレートに交換 これはノーマル。
降りたミッション
外見上アキュラと国内向けの違いは無い 確認はミッションナンバーで行う。
車速、ニュートラル、リバース 各センサーを外して
シーリングボルトを取り外す。
すると、カウンターシャフトがスナップリングで
ミッションケースに固定されているのが見える
このスナップリングを開くと
カウンターシャフトが外れて ゴトン!と落ちる
スナップリングが外れれば
後はクラッチケースとミッションケースを固定しているボルトを外し、
ケースを分割する。
以前のミッションもそうだったけど なにやらデフに文字が書かれている。
メイン&カウンターシャフト、シフトフォーク等を外す。
各ケース&ギアはよく洗浄しておく。
オイルポンプ下にマグネットが仕込まれているが
ここに異常な量の鉄粉が付着している。
原因はミッションドレンボルトのマグネットだった
これは某メーカーの物でNSXのミッションに使えると言われたらしいが、非常に危険。
先端のマグネットが破損してミッション内部に転がり、
ギアに挟まれて粉砕されたようだ。
どの程度各部品に影響があるか調べたが、もろいマグネットだったらしく粉々になっており、
想像したほどは問題になっていなかった。
上が付着していた鉄粉&マグネット粉
ふき取ると下の様なマグネットが見える。
分解洗浄した各部品
カウンターシャフト
まずはカウンターシャフトから作業開始
とりあえず分解して 変速比が同じである1速、5速のギアは再使用する。
ノーマルの分解状態
左のカウンターシャフトに切られた太いギアがデフのファイナルドリブンギアと噛み合って
最終減速比(ファイナル)が決まる 従ってこのシャフトはType-R用に交換。
カウンター側2速ギア比較 左が国内仕様 やはり見た目に大きい。
シンクロリングを組んでみる やはり使える!
NSXの2速は同期力の大きいダブルコーンシンクロ。
カウンター3速比較 右がアキュラ用
Type-R用カウンターシャフトに1速ギア、ハブクラッチ、2速ギア、3速ギアと組んでいく。
カウンター4速比較 右がアキュラ用
5速は元のギアを組んで 新品のベアリング組み込む。
トップナットを締めてカウンターシャフトは完成。
ハブクラッチがスムーズに変速動作する事を確認。
メインシャフト
ミッションから外した状態のメインシャフトASSY
まずはバラバラにする。
NSXはメインシャフトに1速、2速が切られているため
2速を変更するためにはメインシャフトを交換する。
ちなみに、右から1速、リバース、2速。
1速&リバースは、アキュラ・国内向けともギア比が同じなので同一寸法
メインシャフト2速ギア比較 右がアキュラ用
かなり大きさが違う事がわかる。
NSXのミッションは最初期型にのみ2速と3速のギアの間にこのリングが入っていた。
途中から廃止されて代わりに2速のギア幅が増えている(1oくらい)
今回のミッションは最初期型であったため 最終型5速用のメインシャフトに交換して
このリングは使わない。
メインシャフト3速ギア比較 右がアキュラ用 当然アキュラの方が大きい。
メインシャフト4速ギア比較 これは左がアキュラ用
各ギア&ハブクラッチをプレスで圧入して組み立てて
変速機構のためのクリアランスを測定する。
ちなみに、上の写真で測定している2速3速の間に廃止されたリングが使われていた。
設計上の目的はギアの歯面によるカジリ防止だろうか。
組上がったメインシャフトASSY
最近トラブルをよく聞くカウンターシャフト固定用スナップリングは 新品交換。
ちなみに、左下の穴に入る。 オレンジ色に見えるのは下に敷いてあるウエス
この穴が最初に外したシーリングボルトの穴。
メインシャフトクリアランス調整用のシムを用意しておく。
ベアリングの入る穴にシムを入れて
メインシャフトの前後方向のクリアランスを調整する
シムを入れてメインシャフトを入れて ケースをボルトで締める
ダイヤルゲージでシャフト前後方向(この場合上下方向)のクリアランスを測定
本当は純正SSTを使うんだけど、無くても測定可能。
これらの調整作業が終わった後 オイルシール類を新品に交換する。
各ギア、シフトフォーク Type-R用オイルポンプギア等を組み込む。
NSXの変速機構は実に良くできている
これだけ凝った作りの物がスムーズに動くのが不思議。
ミッションケース合わせ面に液体ガスケットを塗る
この後 ケースを組み立てるわけだが、これがすごく難しい。
ミッションケース側のシフトアームと
クラッチケース側のシフトピースが噛み合わないと組めない
やっと上手く組み込めたら合わせ面のボルトを指定トルクで締める。
センサー&チェックボール類を組み込んでアキュラ改Type-R仕様の完成!
ミッションナンバー
今回の作業記録のためサイン!
今回交換した大まかな部品
細かい物は捨ててしまったけど おおむねこれぐらいの点数。
ハブクラッチ、シンクロ等は状態が良かったので全て再使用。
以前も思ったんだけど NSXのミッション内部部品はへたりが少ない。
このアキュラは今回OH時点で走行距離約5万マイルでした。