NSXの5速ミッション用LSDは基本的に共通品です。
内部にカムを持っていないため、左右の回転差が発生してさらに駆動力がかかっても
通常の機械式LSDの様に左右の連結力が上がらない構造であり、
LSD効果は内部のサラバネによるディスク圧着で発生するイニシャルトルクのみで行われている。
そのため 比較的高いイニシャルトルクが設定されているが、
やはりヘアピン立ち上がり等で内輪の荷重が抜けている際 内輪ホイルスピンが発生しやすく、
Type−Rは標準車に比べてイニシャルトルクが高くなっています。
この作業を行おうとすると ミッションを分解しないと出来ないため
通常はType-R仕様にファイナルを変更するついでに行います。
LSDの参考データ
今回のLSDは分解前 ノーマル状態でイニシャルトルクは約8s-m
標準車の設定値は 6-14s-mで限度値が3s-m Type-Rは12-20s-mで限度値が6s-m
今回 新品ディスクを組み込んで、調整シムはそのままで約17s-mだった。
ノーマル状態では ヘアピン立ち上がりで内輪ホイルスピンが多く、アクセルに待ちを必要としたが、
変更後はホイルスピンせずに ぐんぐん前へ出るようになった。
この作業による悪いことは感じられない
まずは、ミッションを開けてメイン&カウンターシャフト等を取り外し、
ファイナルドリブンギアの組まれたLSDassyを取り外す。
このミッションはオメガのオイルを使っていたのでオイルが赤い。
作業性が悪いので、まずはよく洗浄
HONDA純正SST
左からスプリングコンプレッサセット デファレンシャルインスペクションツール
簡単な工具だけど、
これがないとLSD分解は手が出ない。
使い方は 先ずインスペクションツールをバイスに取り付けて
そこにデフを乗せる。
作業前イニシャルトルク測定
もう一本のインスペクションツールを差し込んで
トルクレンチで何s/mかけたら回るかを測定する
外周のボルトを外してデフを分解する
ファイナルドリブンギアはLSDの構成部品でもあるので
ファイナルを変更するなら同時に交換する
NSXのLSDクラッチディスクは メタルではなく
フェーシングが貼ってあるタイプ。
組み込み前にミッションオイルに浸けておく
ファイナルドリブンギアを組み替える
これがキャリアassy この中に遊星ギアが組み込まれている
遊星ギアは中心に組み込まれたセントラルギアと
ファイナルドリブンギア内側に噛み合って動力伝達&差動を行う
それにしても不思議な構造
デフケースからスプリングを外す。
スプリングコンプレッサーをストッパープレートに当てて
サラバネを圧縮する
サラバネが縮んでいるうちに
ストッパクリップを取り外す。
するとスプリングプレート(サラバネ)とストッパープレートが外れる
標準車はスプリングが1枚
これはType-R用ストッパープレート&スプリングプレート
Type-Rはスプリングプレートが2枚
これを押さえるストッパープレートも掘りの深さが違う
ストッパープレート&スプリングプレートを組み込んで
元通りストッパクリップをはめて圧着力アップは完了。
クラッチディスクとプレートを交互に入れる 一番上は調整用のスラストシム
デフケースを取り付けて元通りボルトで締める。
インスペクションツールを差し込んで スピンナーハンドルを使って
馴染ませるため何度か回す かなり固い
回りが馴染んだら
トルクレンチでイニシャルトルクを測定。
今回は無調整で17s/mに落ち着いたのでこれで完了。
設定値から外れる場合
クラッチディスクのスラストシムを変えて調整。