NSXオイルキャッチタンク製作&取り付け

NSXに限らず大多数のクルマは PCVと言うエンジン内部にエアを循環させて
ブローバイガスを吸気に導いて燃焼させるシステムを採用しています。
これは生かしておいても特に問題はないのですが
サーキット走行等を行った場合 ピストン&シリンダー間からのブローバイと共に
ミスト状のオイルが多量にスロットルへ逆流する場合があります。
オイルミストも量が少なければ問題ないと思われますが
コーナリングの横Gとブローバイの相乗効果で多量に発生したオイルミストがエンジンに吸入された場合
本来は燃えないオイルが燃焼室に入るため排気に白煙が混ざる
オイル吸入中のパワーダウン等の弊害が考えられます。
競技においては当然のごとくキャッチタンクにブローバイを貯めてガスは大気解放ですが
ストリートカーであるためオイルのみタンクに蓄えて
ガスは吸気させるオイルキャッチタンクを作ってみました。
このキャッチタンクはKSPから商品化予定です。




まずは材料
2ミリ厚のアルミ板を切って曲げる ステーの部分は4ミリ板


旋盤でホースニップルを作る。


アルミ板を溶接して組み立て ニップルも溶接して
レベルゲージを付ける。


で、完成したのがこれ。
薄板のアルミ製なので超軽量。
この 変則的なカタチは90度バンクV6エンジンに合わせて45度になっています
手前に見えるステーが エンジンフード蝶番のM6ネジに取り付けするわけです。

取り付け編

取り付けを行ったのはお客さんのNA1アキュラ。
アキュラと国内向けではアースポイントが違いますが
エンジンルームで大きな違いは無いので 問題なく取り付け可能。
ただし、NA2 Type-Sで確認したところ PCVの位置がNA1のC30Aと異なり
リアバンクに変更になっていました。
従って ホース長及び配管が異なりますが、
タンクそのものは共通で取り付け可能です。
今回はオーナーの好みでアールズのステンメッシュホースを使いましたが
本当は通常の半透明ビニールホースの方が汚れ具合が分かり 且つ軽量安価です。
また、 この車輌はエンジンメンテナンスリッドが外してありますが
付いている車輌にももちろん問題なく取り付け出来ます。




まずはスロットル入り口についているゴムのジャバラを緩めて
左に90度くらい回して向きを変えます
これは タンクでオイルミストを分離したブローバイガスが帰ってくるため。



フロントバンクとスロットル後をつないでいる 配管をPCVごと外す。




スロットル側はバキュームが発生するためゴムのメクラを取り付ける。




タンク本体はここに付きます。
メンテナンスリッドの蝶番取り付けネジを長い物に交換して
下からナットでタンクを取り付けます。
ナット2個による固定ですが
タンクのステー部分は4ミリ厚のアルミ製であるため
かなりしっかり固定できます。
取り外しに関しては ナット2個外すだけなので 非常に簡単です。




リアバンクのブローバイ出口とスロットル前にホースを取り付ける。
元々付いていた鉄の配管はそのまま遊ばせてあります。
これはこのまま遊ばせておいても 外してしまってもかまわないけど、
もう1本細い鉄パイプとロウ付けされているので 外すなら対策が必要。




フロントバンクにPCVバルブを取り付けて♯6のホースで配管をする。
全体のレイアウトはこんな感じになります。




ついでに オーナーの注文で
ブレーキマスターバックのバキューム配管をアールズに交換。
だいぶ雰囲気が変わりました。 ステンメッシュホースを使う際
周辺部品と干渉する部分には ホースにスパイラルチューブ等を巻いて保護します
ステンレスメッシュは非常に固いため 常時干渉していると
相手が鉄パイプであっても長期干渉しているとすり減って穴が空きます。
無駄な配管の遊びが出ないよう タイラップで束ねておきます。


取り付けその後・・

私のNSXにも同様のキャッチタンクを取り付けていますが
走行会を走った後
意外なくらいブローバイが溜まっていることがわかりました。


レベルゲージでは タンクを傾けたときいくらか溜まったかな?
と言う程度だったんだけど


タンクを外して排出してみてびっくり。
けっこうな量が出てきた。



100ccは大げさだけど
50cc以上溜まっていたようだ。

通常だと
このオイルと水分とカーボンの混合物は全てエンジンに吸入されていることになる。
ほとんどがオイル分なので
吸入したところでエンジンは壊れないけれど、
このブローバイがスロットルを汚し アイドリング制御バルブを詰まらせ
吸気バルブやピストン&燃焼室に積もる
多量のカーボン&スラッジの原因になるわけだ。
NSXはNAなのでまだ良いが
ターボエンジンではこのオイルがタービンを汚し
インタークーラー内部を汚すため熱交換性が悪化して性能ダウンを招く。

さらに、NSXではあまりないけれど
同じくHONDAのシビックやS2000では
ヘアピン立ち上がりで白煙を吐いているクルマが非常に多い。
これは遠心力とフルパワーの相乗効果で
ブローバイガスが大量発生して
これがエンジンに吸入されるので
燃焼室にオイルが回り白煙になるものだと思われる。

当然ながら本来燃えないオイルを吸気させると言うことは
その間パワーダウンの原因になるわけで
ブローバイガスとオイルミストを分離して
エンジンにオイルを吸気させないようにすることは
エンジン内部の衛生面でもパワーの点でも有効だと思われます。

なお、今回溜まったオイル量は
ほぼ1時間のサーキット走行と
高速走行を合わせた通常走行約1000q分です。
恐らく、そのほとんどはサーキットだと思われるけれど
これだけのオイルがエンジンに吸入されていると思うと
けっこう怖いことだと思う。
いくらハイオクガソリンの清浄成分があったとしても
これだけオイルを吸い込んでしまっては
燃焼室にカーボンが溜まるのも分かる気がする。

ちなみに ブローバイガスを大気解放すると
未燃焼ガスを排気することになり法的に問題で車検でも引っかかるけれど
分離してガスを吸気させる今回の方式では
車検は問題なくパスする。
本当はフロントバンクのPCVバルブも外して、ただのジョイントにして
キャッチタンクに入れた方がいいんだけれど、
ブローバイの量はリアバンクからのホース1本で足りるので
PCVはそのままにしている。
だから、実際にはフロントバンクからはキャッチタンクにはガスは流れていない。
解放にすると車検で引っかかり
わざわざフィッティングを作ってまで通路を作る必要もないので
今回の形態になっているわけです。

☆追記
その後わかってきたことは、
使用するオイルによってブローバイの量はまるで変わるようです。
現在私のNSXはHKSの0W−40を使っていますが
通常のサーキット走行ではほとんど溜まらないようになりました。

それから
PCVバルブのチェック弁は 壊して導通させた方が良いようです。
現在KSPで取り付ける際には
チェック弁はドリルで内部を壊して導通にしてあります。




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