NA1のオーナーなら誰もが気になるエキゾーストマニホールド。
純正は鋳造品で各シリンダーからの排気がポート直後で合流する
およそ 現在の高性能NAエンジンでは考えられない構造。
NA2になってから この点は改善されて
等長ではないが、ステンレス製のタコアシタイプに変更されました。
社外品はNSX用だけあって非常に高価で
このNA2用の流用を考えた人は多いのではないでしょうか。
実際手に取ってみると、良い意味でも悪い意味でも純正的作りです。
これを検証しながら私のNA1に取り付けてみようと思います。
今回は NA2用一式が中古で入手できたのでこれを使いましたが
純正のエキマニは 片バンク4万円弱で
前後バンクと純正の遮熱板を全てそろえても11万円近辺で収まります。
この遮熱板が純正らしく 実に良くできていまして、
私が金額面以外に純正が良いと思ったのは遮熱板が気に入ったからです。
エンジンルームの温度は出来るだけ上げたくないので
エキマニは遮熱板で囲うか、耐熱布でシールドするのが理想的だと思う。
すぐにトラブルはないと思いますが、
長期的に見た場合 やはり近辺の部品に対する熱は心配が残る。
これは 仕事柄からの経験ですけど。
ノーマル状態検証編
入手したNA2排気系一式。
写真にないけれど、マフラー本体もある。
エキマニの遮熱板に感心。やっぱり純正ですね。
集合後のパイプ以外はフルカバードされている
ちなみに、集合後のパイプは外径50だけど2重になっていて
内側のパイプ径は43位らしい。
2重であるが故集合後には遮熱板が無いと思われる。
それにしても、パイプ以外は無処理の鉄ですね。
フランジ面の錆がはげしい まあ、性能上問題はないのですが。
今回エキマニのみ使用して触媒は使わないで
必要時にはNA1用が付くようにアダプターを製作。
これはリアバンク。
等長にはほど遠いけれど 形状的に悪くなさそうだ。
左のパイプに緩衝ジョイントが入っているのが見える。
ステンレスは 熱膨張が激しく これだけの構造物だと
排気熱でミリ単位の伸び縮みが発生する。
従って 逃げがないと溶接の継ぎ目で割れることになる。
一本物の良くできた完全等長マニホールドであれば割れにくいのですが
燃焼温度の高い状態で長時間使用すると、不等長はまず割れる。
エキマニのエンジン側フランジ。
重ねているのはNA1のガスケット
思った通り 取り付けに関して全く同じ形状&寸法だ。
だけど、NA1とNA2のガスケットを重ねてみると
ポート径がNA2の方がちょっと大きい。
エンジン側のポート径は未確認のため不明だけど
NA1にこのエキマニを流用する際にはどちらを使っても問題ないと思う。
これが NA2エキマニのパイプとフランジの溶接部分。
表から溶接すると 溶接の熱で歪みがでるからだろうが、
この方法だとポート面積がかなり狭くなってしまう。
それでも多分パワー的に差が出るほどの事ではないのだと思うけれど。
これは フランジの外側。
仮止め程度の溶接しかしていない
おそらく生産時に治具上で固定にため表面を溶接して
本溶接は内側から行っているのだと思われる。
今回は 内側をきれいに削り込んで こちら側を溶接する予定。
これはリアバンクエキマニの 集合部。
やはり表側は溶接していない 内側を見るのが怖い気がする。
これは触媒との接合ジョイント部分。
エキマニのパイプ外径は約50だけど、
実はこのパイプは2重になっていて
内側のパイプはφ42.7
触媒とのジョイント部分はこれをさらに絞り込んであるのでかなり細い。
エキゾーストパイプはφ42.7×3本なので気分的にやっぱり細く感じる。
まあ、エンジンからの排気は連続した流れではなく
パルス的に出てくる物なので、単純に42.7×3本分の面積は必要ないけれど
やはり有効径で50は欲しいところですね。
フランジの内側溶接といいこの部分の絞りといい
効率よりも安全性を重視した、いかにも純正的な作りですね。
加工編
まずは、フランジの表側をアルゴン溶接できれいに付けていく。
そして、フランジの内側にある溶接の段差をきれいに削り込む。
左が加工後 右はノーマル状態。
3〜5ミリくらいフランジの穴径に対して溶接で肉盛りされている。
荒削り状態のリアバンク
同じく フロントバンクのフランジ。
フランジ面は溶接で歪みが出るので
ベルトサンダーで平面に修正しておく。
取り付け編
ノーマルエキマニを取り外して エキマニからO2センサーを外す。
毎度のことだけど
リアバンクのセンサーは焼き付いていて回らない。
これを無理に回すとネジが壊れて再使用不可能になってしまうので、
バーナーでエキマニ側を急速に加熱する。
センサーをなるべく加熱しないようにして注意しながら
エキマニ側が赤熱するくらいまで加熱。
O2センサー用の専用ボックスレンチを使って
ネジ山を壊さないように慎重に緩める。
常温時ではビクともしなかったセンサーはあっさり緩んだ。
外したセンサー
ネジ山も無傷。
ここで、ネジ山が少しでも痛んでいたらダイス等で修正する。
外したNA1エキマニとNA2マニの比較。
NA1用があまりにも酷いカタチをしているので
NA2用は効率もかなり良さそうに見える。。
まずはフロントバンクのエキマニを取り付け。
さすが純正なのでまったく干渉やネジの締めづらさが無い。
フロントバンクの集合後パイプはオイルパンにかなり接近する。
ほとんどギリギリでかわしている。
フロントバンクの遮熱板は
エアコンコンプレッサーのステーと干渉したので
斜線部をカットした。
発熱部はきれいにシールドされるので問題ないでしょう。
これはリアバンク。
こちらも完全ボルトオンで装着。
そして、写真を撮り忘れたけど遮熱板を付ける際
けっこう知恵の輪状態で苦労する。
しかし、リアバンクの遮熱板は無加工で取り付け可能。
問題になるO2センサー
エキマニの集合部位置が変わるため
センサー取り付け位置もエンジンから遠ざかってしまう。
従ってセンサーが届かないので配線を延長して対応する。
ちなみに、上のセンサーがフロントバンク用で下がリアバンク用。
フロント用の方がコードが長い。
このフロント用をリアに使うと、配線延長しなくても届くことがわかった。
フロントバンクにはリア用センサーを15pくらい配線延長して使用。
今回の目玉部品
NA2エキマニ→NA1マフラーアダプターの製作。
用意した部品はこの写真。
φ50のパイプとジャバラ
触媒側サイズのフランジ&ガスケット
そして、ユニバーサルジョイント側に対応するフランジとカラー。
フランジとカラーはあらかじめ作っておいたもの。
フランジとカラーを溶接する。
これでNA2エキマニ出口のジョイントと組み合わせられる。
私の使っているマフラーは触媒取り付け不可のタイプなので
集合パイプフランジ位置はNA1の触媒入り口位置になる。
NA2エキマニはNA1よりも短いので この間を今回のアダプターで繋ぐ。
まずは フロント&リアバンクとも 各部品を仮溶接で組み立てる。
そして、本溶接してできあがり。
これを取り付けると
NA2エキマニにNA1マフラーが取り付けできた。
ユニバーサルジョイントとジャバラが入っているので
エンジンの揺れや振動を吸収出来る。
そして、このマフラーを外せば
NA1触媒&純正マフラーが取り付けできるので
車検の時も安心。
製作後記
実は、このアダプター。
KSPでは5年くらい前に商品として企画して
試作品を作り、雑誌広告先行で紹介したんですが
まったく問い合わせが無くて お蔵入りした部品を使って組み立てました。
NA2が出た当時、おそらくは月に数台しか売れない上に
マフラーを換えるユーザーは非常に少なかったので
当然と言えば当然かも知れません。
しかし、現在ではユーザーも多くなり
ある程度の需要が見込めることと、
今回のようにNA1にNA2エキマニを流用する際に便利であるため
もう一度商品化を検討しています。
そして、肝心のインプレッション・・・
これは、排気音の点で劇的に変化がありました。
正直変化は期待していなかったんですが
まず、エンジンをかけた瞬間から排気音の変化がわかります。
音量的には大きくなる傾向で
(この点から抜けが良くなったことがわかる。)
音質は高い方に変化しました。
あくまでこのマフラーとの組み合わせでの話ですが
ノーマルマニでは5000rpm近辺から上では
排気音が消えてしまったんじゃないかと思うくらい音質が曇っていたのが
回すほど明らかに高くてデカイ音になります。
そして、音質の変化からか
室内のコモリ音も減少しました。
等長ではないためか、いわゆる「そろった音」にはなりませんが
私的に音質の傾向としては非常に好ましい方向になりました。
パワーの点でまだはっきり向上したのか検証していませんが
近いうちにダイナモでチェックしてみます。
しかし、高回転時に抜けの良い音に変わるため
気分的にはストレス無く高回転まで回るようになった気がします。
純正であるが故の出来の良さ&悪さ 遮熱の完璧さ 交換しただけの効果。
社外品のNSX用エキマニが非常に高価であることと
性能はともかく、NA1純正エキマニの出来があまりにも酷い事を考えると
安価にイモマニから脱出できる点で
この流用はかなりGoodだと思います。
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