NSX F・Con/V-Pro


NSXのエンジン制御コンピュータは
元々エアフロレスDジェトロのため 非常に優秀な制御を行っていますが
ノーマルCPは書き換えが不可能ではないが、融通が効かない部分があり
現時点ではセッティング機材の未対応から正確な点火時期を知る方法が無いため
エンジン制御をノーマルCPからHKSのV・Proに変更します。
V・Proによるエンジン制御は
業界ではかなり実績があり 特にターボエンジンにおいては
制御の細かさから大幅なフィーリングアップ&信頼性を得ています。

完全ノーマル車輌に取り付けても劇的な効果は期待できないと思いますが、
今後のチューニングのステップアップをする際
データ変更が簡単でその上高度な制御が可能なV・Proは
非常に有効なエンジン制御を行うことができます。

今回は吸排気系ライトチューニング状態でのエンジン制御ですが
これがまとまると 例えばターボチューン、排気量変更 スロットル変更等
ノーマルCPデータ変更では対応不可能なレベルのチューニングを行った際にも
完璧な制御が行えます。

しかし、HKSではV・ProのNSX用ハーネス&基本データは設定していないため
チューニング業界で一般的な他車種に比べて
作業が面倒になります。
まずはハーネスの設定がないため ハーネス製作から始める。
NSXとトヨタのスープラJZA70は
コンピュータのカプラーが同じであるため、
JZA70用のハーネスを使い、これにV・Pro汎用ハーネスを組み合わせて製作します。

そして、エンジン制御に関する基礎データが全く提供されないため
アイドリング領域からすべて製作する必要がある。
HKSからデータが全く供給されないため
NSX用のV・Pro制御は全てショップに依存されるため
ショップ間の技術レベルがそのまま性能差に反映されることになります。



HKSから届いたV・Pro一式
内容は 本体、圧力センサー、ハーネス


右がJZA70用のハーネスとV・Pro用汎用ハーネス
左は圧力&吸気温度センサー&ハーネス。
吸気温度センサーはPGMF-I標準搭載のセンサー信号を使ったため
左下の吸気温度センサーは使用しなかった。


これは、ノーマルコンピュータからの点火信号を入れるアダプター。
ノーマルCPからの点火出力を何も繋がず解放した状態でエンジンを始動すると
点火系異常と判断されてエンジンチェックランプが点灯するため、
これを回避するために点火信号をまとめて
抵抗を通した後アースに落としているらしい。


ハーネスの加工
JZA70用ハーネス完成品を切断する。


NSXとJZA70ではコンピュータカプラーは互換性があるが
各センサー及び出力ターミナルは全く異なるため
V・Pro汎用ハーネスと半田ずけ付けで繋ぎながら組み立てていく。


そして、完成した状態がこれ。


V・Proは車輌とノーマルCPの間に入ることになる。
配線がかなりかさばるので一時的にCPを外して取り付け。


エンジンルームに吸気圧力センサーを取り付ける。
ノーマルのPGMF-IもDジェトロ制御なので圧力センサーは持っているが、
圧力センサーはV・Pro指定のものを使う
取り付けは両面テープで貼っただけでOK。
センサーハーネスを室内に引き込んでV・Proハーネスに繋いで完了。


V・Pro本体は
リアの内装に張り付けた。
ノーマルCP&V・Proハーネスはきれいにまとめて内装の中へ。
V・Proは表のエンブレムを取り外すとモジュラージャックが2個とディップスイッチがある。
ディップスイッチの切り替えで多種多様なエンジンに対応する。
そして、モジュラージャックとノートパソコンを繋ぐ。
白いコードが繋がっているのがパソコンとの通信用
左側の黒いコネクターはデータロガー機能を使うためのジャック。
ここにトリガースイッチを繋いで、走行中スイッチを入れると
約1分間 点火、燃調、空燃比等のエンジンデータがロギングされてV・Pro内に記録される。





卓上で作っておいた暫定データでエンジン始動後
空燃比計とシャーシダイナモデータを参考に
アイドリング、軽負荷、加速 等のデータを作っていく。
通常走行可能なレベルになったところで
路上で実走行領域のデータを作り 全開領域を作っていく。

結果に関して

まずは今回 吸排気系のみ変更状態でデータ取り開始。

結果からいうと
シャーシダイナモでピークパワーに関して劇的な向上はできませんでした。
しかし、中間域において
ノーマル制御では不自然に空燃比が薄くなっていた部分を適正にしたところ
15ps近辺の出力向上が認められました。
これは、VTECカムが低速側の状態での領域で顕著なのですが
燃料が薄くなった原因としては、吸排気系の変更が考えられます。
吸排気系変更後でも高負荷領域はほぼ適正であったことから
ノーマルの制御は高負荷領域では多少濃かったのかもしれない。

よく、エアクリーナー交換やエキマニ交換で 低速トルクの減少が発生しますが、
低速側カムの領域において空燃比の変化が原因かもしれません。

高回転高負荷領域セッティングで
シャーシダイナモ上で思い切ったデータ変更も行ってみましたが
空燃比を薄くしてもパワーに直結はせず、
点火時期と共に色々試してもやはり劇的な向上はありませんでした。


今回の作業後
一般道で走り回った体感では
劇的な加速感向上は感じられませんが
アクセルに対して ツキが良くなっているのがわかります。
シフトアップしてアクセルを入れた直後のトルク感は向上しています。

暫定セッティング完了後
筑波サーキットを走行してみましたが
やはり直線の伸びは良くなっています。
最高速も裏のストレートで過去最高値よりも5キロほど伸びています。
サーキットにおいては コーナーの立ち上がり方でも最高速に影響をしますが
同じドライバー(私です)&タイヤでは5キロは誤差ではないと思います。
また、立ち上がりでの加速が向上しているためか
ラップタイムも0.5秒以上短縮していました。

走行中 ヘアピンでアクセルオンオフや、
意地の悪いテストをしながら走行してみましたが
全くエンジンはグズることもなく 扱い安さは完全ノーマルフィーリングです。

気になる通常走行や冷間時のフィーリングに関して。
冷間時のエンジン始動は
ファーストアイドル機構がノーマルCPで行われるため
水温が低ければエンジン始動と同時にアイドルアップします
このときの燃料制御はV・Proですが、水温補正の燃料マップを読むため
安定して暖機を続けます。
エアコンや、電気負荷によるアイドルアップもノーマルCPの制御が生きているため
これも全く問題なし。

V・Proで制御を行うのは点火時期と燃料噴射量ですが
他の アイドリング制御、メーターや機器を動かす制御 ドライブバイワイヤー制御等は
全てノーマルCPで行われるため
エンジンに対してきちんとデータが作られている状態のV・Pro制御ならば、
まったくノーマルフィーリングの扱い安さを維持できます。

今回の制御変更後
私のNA1は リアの内装に取り付けられたV・Pro本体を見なければ
あるいは言われなければ、
制御を変更しているとまったく気づかないレベルの安定性になりました。
それでいて 乗ってみると
「不思議にエンジンがよく回る・・・」と言う感覚が得られます。

今回の制御変更は全て今後のための布石ですが
現状でもサーキットラップ短縮等の効果が得られたので
効果的なチューニングが難しいNAエンジンのNSXに対してはお勧めできることだと思います。
特に、現段階で確実なデータ変更方法の無いNA2に関しては
DBWを確実なノーマルCPに行わせたまま
エンジン制御データを簡単確実に変更できるため
特にお勧めできると思われます。
なお、NA1とNA2ではコンピュータカプラーは共通であり、
V・Proハーネスも同じものです。


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