トラブル事例

エンジン降ろしメンテナンスで発見されたトラブルの事例と
対処方法などを紹介していきます。
NSXの部屋へ戻る
左の写真は傷の入ったシリンダー
破損したバルブガイドは
ピストンとヘッドの間で叩きつぶされ細かくなり
ピストンとシリンダーの間に入り込んで
大きな縦の引っ掻き傷を作る。

この程度ではエンジンは普通に回っているけれど

圧縮は落ちるし
圧縮抜けに伴うブローバイガスが大量に発生することになる。

また
砕けたバルブガイドが
ピストンとシリンダーヘッドの両方に突き刺さっていると
「カンカンカン・・」という打音が続くこともありました。

これは
共鳴チャンバーのバルブが2枚外れていた事例。
このバルブプレートはセンターシャフトに+ビス2本で取り付けられていて、ネジの反対側はカシメてあるんだけど
ネジが緩んでバルブが外れるトラブルが実際に起きています。
右の写真で 脱落したネジが写っていますが4本のうち1本はマニホールド内には見当たらず
エンジンに吸われていったようです。
この車輌は 低速トルクダウンの修理依頼で入庫してこのトラブルを発見した次第ですが
トルクダウンの原因は共鳴チャンバーが正常動作していなかったためでしょう。
燃焼室に転がり込んだネジでピストンとヘッドに傷は入っていたけれど 致命的なブローには至っていませんでした。
だけど、このまま全開走行を繰り返していたら 残り3本のネジもエンジンに吸われて
大きなトラブルを起こした・・かもしれない。
なぜ、カシメてあるこのネジが緩むのかは不明で
発生が希である点と この車輌では2枚が外れている事から製造上の問題である可能性が高いと思われます。

この様に
完全にバルブが外れているなら
スロットルからファイバースコープを入れてみれば確認できるのですが
取り付けネジの初期の緩みは マニホールドを分解しないと確認できません。
マニホールド脱着は
エンジン搭載状態でも可能ですが
重整備であるエンジン降ろしメンテナンスのオプションとして設定する事にしました。

ところでこのNSXは
エンジンチューンを行って350馬力程度出ている仕様のため
社外のエアクリーナーを使っている車輌ですが、
やはり、純正ほどの濾過性能が無いため エアクリーナを通過した砂埃でマニホールドの中はかなり汚れている。

吸気量確保のために社外のエアクリーナーを使っているわけですが
上記のノーマル車輌と比べてみれば エアクリーナは純正の濾紙タイプが優秀と言う事でしょう。

この程度の砂塵では
即エンジン本体に致命的なトラブルが起きるわけではありませんが
この砂塵とブローバイオイルがアイドリングエアコントロールバルブを目詰まりさせるので
アイドリング不調の原因になってきたりするわけだから
エアクリーナーを社外品に交換するデメリットも考えた方が良いと言う事でしょう。


吸気バルブが折れるほどの大ダメージで
排気側の鋳鉄ガイドはバラバラに破損していましたが
吸気側に使ったリン青銅バルブガイドは折れることはなく
これを見ても
ガイドとしての機械的強度は非常に高いと思われます。

このエンジンのように
大きなトラブルが起きてしまえば結局 全損となりますが
多少のオーバーレブなど
サーキット走行で起こしやすいドライブミスなどが蓄積して
深刻なエンジンダメージに繋がらないように予防するという意味では
リン青銅吸気バルブガイドの使用はメリットが大きいと思われます。

折れたバルブガイドは パイプ状のまま吸気バルブに沿ってバルブの傘まで降りて
高速で上下動作するバルブと折れた断面側で何度も叩かれてだんだん破損して
燃焼室へ落下していきます。
また多くの破片はバルブに跳ね返されて吸気ポートを逆流しインテークマニホールドから共鳴チャンバーの中に転がり込んで潜伏し
アクセルを大きく開けて吸気量が増えたとき 再びバルブへと転がっていき 運が悪ければバルブの隙間から燃焼室へ落下します。
従って バルブガイドが折れた場所以外のシリンダーに破片が転がり込む事があります。

この、バルブガイド折れの対応修理として
純正の新品ガイドに交換修理でも良いのですが
1つの方法として
リン青銅の強化バルブガイドへの交換を行っています。

純正で使われる鋳鉄製ガイドは
自己潤滑性があり 長期的な耐久性に優れている反面
素材的に脆く 衝撃で破損しやすいことが
連続高回転やオーバーレブなどの酷使の条件下で
ガイド破損の原因ではないかと思われます。

対してリン青銅のバルブガイドは
強度と粘りがある素材なので割れる危険が少なく
アフター業界のハードチューニングでは実績がある素材ですが
耐摩耗性を含めた寿命という点では鋳鉄製に劣ると言われています。

だけど
もし、エンジン高速動作中に吸気バルブガイドが折れた場合
シリンダーやピストンなど
エンジンの重要な構成部品は即深刻なダメージを負うわけで
それなら
ガイドが消耗した頃
再度バルブガイド交換を行った方が良いという考えも成り立ちます。

一般的にバルブガイドは
高温になる排気側の方が条件が悪く消耗も早くなるため
KSPでC32Bチューニングを行う際には
破損トラブルが発生する吸気側のみリン青銅のバルブガイドを使い
排気側は純正の鋳鉄を使うという方法も採用するようになりました。

NSXでは
排気側バルブガイドの破損事例は起きていないし
万一排気側バルブガイドが破損しても
燃焼室に転がり込む危険は低いため
ライフとトラブル防止を考えてのことです。

インテークバルブガイド破損とシリンダーヘッドOH

NSXの吸気バルブガイドが折れるというトラブルが
近年になって何件も発見されるようになりました。

吸気ポートに10ミリほど突き出している鋳鉄製のバルブガイドが
先端部がポッキリと折れてしまうという現象で
特にC32Bでの事例が多く
サーキット走行頻度が高い車輌に多発している事から

吸気バルブが1ミリ大きいC32BはC30A用より微妙に重量が有り
シフトダウン時にオーバーレブした時などに
振れている可能性があります。
左写真は吸気ポートからバルブを覗いたところ。
見事にガイドが無くなっている。

バルブガイドの破損は
C32Bでの事例がほとんどですが
C30Aでも発生しています。

これは
サーキット走行が多かったNA1・Type-RのC30A。
バルブガイドは
2ヶ所折れていました。

この車輌は
C32B換装の作業で入庫してきたので
ヘッドは再使用するため
燃焼室加工と同時にバルブガイド交換して対処しました。

これは
C32B換装後
サーキットでエンジンブローしたシリンダーヘッドですが
ピストンが割れてバルブが折れるほどの大破でした。