事故直後の画像
外見からはそれほど激しくは見えない。
ダッシュボード周辺を外してみると
運転席足下付近までフロアが歪んでいるのがわかる
ボディ左をヒットしたため左ストラット周辺が歪んでいる。
サスペンションアームはかなり後方に曲がっている。
内装を全て外して作業開始
セレットというボディ修正計測器に
NSX専用の治具をセットして車輌を載せて計測する
このタワーの先端が指定のボディ穴に入ればＯＫ
今回の事故ではリア回りは全く歪んでいない事が分かった。
フロント回りはやはり大きく歪んでいる
フロントは修正するよりも交換した方が良いとの判断で
新品のフレームAssyをHONDAから購入。
さすが新品 細かいところまで完全に出来上がっている。
このフレームはメーカー製造ラインで溶接組み立てされているため
当然寸法がでているため
この後は車輌側の破損部を取り外す事になる。
アルミフレームはエアソーで切断していく
スポット部はスポット取り外し用のドリルで外す
サイドシル以降は全く無傷。
キレイに部品を外した状態
こちら側のフレームにはダメージがない。
取り外したフロントフレームAssy
NSXはアルミであるが故か
事故の衝撃はこの部分だけでほぼ吸収してしまい、
以後のフレームには影響が残らないようだ。
新品フレームを仮組みする
セレットの治具にフレームをセットして
ボディ本体に対しての位置出しをする。
この治具では１ミリ以内くらいまでの精度が出せるらしい。
破損したフレームを取り外したボディと新品フレームがピッタリと合う。
治具上でフレーム位置が決まった状態
治具はサスペンション取り付け部などの
寸法上重要な位置に多数取り付けられて位置決めを正確に行う。
溶接部をマーキングし、
この後フレームを一度外して溶接部の表面塗装を削り取る作業をする
メーカー製造ラインでは
量産効率のためスポット溶接を使うけれど
今回のような修理の際には半自動のMIG溶接機を使う。
表側フレームに穴を開けて そこから溶接棒を溶かし込む溶接のため
スポットよりも強度がでる。
１カ所１カ所時間をかけて歪みのでないように溶接していく。
ボディ溶接が完了したら
ブースに入れてフレーム部を塗装
接合部には純正同様ウレタンシーラントを充填して塗装
こうなると全く修正後が分からなくなる。
フレーム交換完成直後。
作業のために取り外したボディ部品を取り付けていく
ホイルハウス内側も純正同様黒のペイントが入る
左側のサスペンションアーム類は全て新品に交換。
内装が組み立てられて 終了間近
この後フェンダーやボンネット等の外装取り付け塗装を行い
フロントガラスを取り付けて作業は終了になる。
今回の修理を行ってみて
NSXのフレームというのは 事故の際キャビン部に衝撃が伝わる前に
フレーム先端部でほとんど吸収してしまう事が分かりました。
実際 修正治具であるセレット上でもボディ本体の歪みは見あたらず、
フロント部交換のみで完璧に寸法は元通りになりました。
セレット（CELETTE）はフランス製のフレーム修正機だそうで
強固な筐体の上に各車両専用の治具を取り付けて
ボディ寸法を３次元的に計測修正していく物だそうです。
実際
この治具を使って修理された今回のＮＳＸは
フロント大修理にもかかわらず、後にアライメント調整した際には
まるで問題なく数値がそろいました。
もちろん作業する担当メカニックの技量によっても
結果は変わってくると思われますが、
今回の仕上がりは完璧にノーマル再現されていて
おそらくはかなりのＮＳＸ玄人でも見分けがつかないレベルだと思われます。
そして、ノーマル状態ではスポット溶接されている部分が
MIG溶接になるため
溶接部の強度はメーカー純正よりも高くなります。
これだけの修理を行うと、
金額面で廃車するか復活させるかで悩むところですが
ディーラーに持ち込むには難しいレベルに改造されたNSXでも
問題なく修理できるため
我々チューニングカーユーザにとっては非常に頼りになる修理業者です。
また、ディーラーに修理依頼しても
ほとんど下請けの町工場に入れられて修理する事になるため
完璧にキレイに治したいNSXオーナーにとっても頼りになります。