NSXには AT設定もありますが
やはり走って楽しいのはMT仕様ですね
市場ではAT車が安価なため
これを購入後 やはりMT車に乗り換える場合も多いようで、
AT車をMT化できれば・・
と考えているATユーザーは多いようです。
NSXのAT、MTではエンジンが細部で異なり
おそらくはATユニット関連の許容回転数から
エンジンの性格も若干仕様変更されていて、レッドゾーンは7500rpmになっています。
MT仕様はエンジンの最高出力発生回転数がおよそ7500rpm近辺のため
このままでは性能を生かせないためにカムが変更されて最大出力発生回転数が抑えられて
結果 最高出力も15psほどダウンしています。
しかしながら
VTECでカムの切り替わる5800rpmまでにおいては
AT仕様MT仕様でカムの仕様は同じであるため
6000rpm近辺までの走りではATエンジンでも遜色なく走ることになります。
通常ストリートにおいては
6000rpm以上回すことは滅多にないため
安価にMT車にするなら ミッションのみをMT化するだけで充分楽しめるようになります。
今回の車輌はそんな理由でMT仕様に変更希望のお客さんです。
NSXのボディは
ATでもMTでも全くと言っていいほど同一で、
クラッチペダルの取り付けや
エンジンルーム側でMT車特有部品の取り付けネジ穴まで全て問題なく付いているため
作業的には完全ボルトオン感覚で行えます。
オイル クーラント類を抜いてATFも抜けるだけ抜いて 作業開始。
まずはATミッションとエンジンを分離する。
サービスホールから
ドライブプレートとトルクコンバーターを結合しているM6ボルトを取り外す。
このボルト数本でエンジン出力はミッションへ伝達されている。
ATミッションを降ろす。
MTと違い、メインシャフトがクラッチに差し込まれているわけではないので
”ミッションを抜く”と言うよりは ”降ろす”という感じ。
この降ろす作業はMTよりも楽。
降りたAT
トルクコンバーターと一体で降ろせるため
ATFがたれ流しにならず非常にやり安い。
このミッションからは 車速センサーを取り外して5MTに再使用。
エンジンからドライブプレートを取り外す。
ATには水冷のミッションオイルクーラーが付いていたため
冷却水配管を繋ぎなおす。
青いホースが今回取り付けた物。
エンジンにフライホイルを組み込んで
クラッチを組む。
こうなるとまったくMTに見えるようになってきた。
MTミッションを載せる。
これはいつもの作業なので 特に問題なし。
寸法的にもまったく互換性有りで完全ボルトオン。
ミッションが載った状態
エンジンハーネス関係がATのままな為
AT制御のカプラー類が何個か余るけど
特に問題ないようです。
今回中古だけど程度の良いドライブシャフトが手に入ったので交換した。
ミッションから右側に出るハーフシャフトはブラケットの穴が位置が
エンジンからの距離で違うため異なる。
これは交換必須。
今回はType-R用ではなく標準クラッチペダルを使うので
油圧ダンパーも純正品の中古を使用。
取り付け穴及びベースは全て車輌側にあるので無加工でいける。
中古で入手したブレーキ&クラッチペダル
クラッチのマスターシリンダーAssy
クラッチマスターシリンダーを取り付ける。
これもボルトオン。
純正のクラッチ油圧配管は
ボディのかなり奥を通っているため、
正攻法で純正を使うと作業が大がかりになるので
アールズのステンメッシュテフロンホースで引き直すことにした。
このホースはブレーキ油圧に使われる物なので
クラッチ油圧程度では全く問題ない。
左に見えるのが油圧ダンパーで
これに配管を繋いでフロアを這わせてフロントのマスターシリンダーまで導いていく。
シフト操作のワイヤーも組み込んで 下回りの作業は概ね終了。
ATセレクトレバーを取り外す。
ところで シフトベースの形状がATとMTでは異なりました。
AT用にMTのシフトレバーユニットは組めないので
これはMT用を使う。
ブレーキペダルを交換するには
ステアリングコラムまで取り外さないと出来ないため
作業は大がかりになる。
これくらい分解してブレーキ&クラッチペダルを組み込む。
ペダル類、シフトレバー等が組み込み完了して
室内の作業が終了。
シャーシダイナモで走行させて
駆動系の異音や動作のチェックを行う。
その後出力を計測。
MTらしいきれいなパワーカーブを描く。
この車輌はマフラーが変わっているため
カタログスペックよりも高い最高出力を記録しました。
272ps 30.7kgm
これを 元々MTの車輌のグラフと重ねてみると。
やはりスペック通りの差になります。
赤が今回の車輌で グリーンは私のNA1です。
VTEC切り替え前 Row側のカムで駆動される6000rpm近辺までは
まったくMT車と同じレベルの出力カーブですが
6000rpmを超えたあたりから差が出始めて
7000rpm手前で大きくドロップしました。
MT仕様のエンジンでは
リミットの8000rpmまで落ち込みが少なくきれいなパワーカーブです
ですが、この車輌に実際乗ってみると
フィーリング的にはまったくMT車と変わらない感覚です。
今回組んだミッションがType-R仕様だったため 標準クーペよりも軽々走ります。
これは、NSXで町中全開走行するレベルでは
7000rpmを超えて引っ張ることは少ないので
体感ではほとんど差を感じないわけです。
逆にサーキット走行などでは上の1000rpmが大きく違うので
戦闘力の点でマイナスになることが想像されます。
このことから言えるのは
サーキット等 高回転を常用するシチュエーション以外では
ATエンジンのままでもほとんど性能差は無くて、
楽しさはまったくMT仕様と変わらないことから
安価にMT車にしたいなら
ミッションのみをMTに換装するのはかなり有効であると思います。
作業にかかるコストは
入手できた中古部品価格によって大きく左右されるため
いつでも同じ金額で出来るという訳にはいかないのが現実ですが
作業難易度的にはそれほど高くないですね。
030415追加情報
後のダイスケ号作業に於いて
AT用のECUを使用した場合、
シフト位置信号をNで入れるか、Dで入れるかで
パワーが大きく変わる事が分かりました。
この件はダイスケ号作業記録に残します。