後期型ABS取り付け換装

NSXのABSは前期後期で分かれていて
LEV仕様になったGH-NA1&NA2からが後期型になっています。

前期型ABSは、油圧をユニット内部に蓄えておいて
ブレーキロック時にペダル反力として使う構造で、
高圧油圧を発生&蓄えるためにユニットが大がかりで重くて
トラブルの多い悪名高きABSでした。
動作レスポンスも現在の新型車に比較すると非常に遅くて
初期型NSXのウィークポイントの一つです。

後期型ユニットからいわゆるボッシュタイプに変更されて
格段に早い制御と大幅な軽量化を同時に達成しています。

この後期型ユニットが初期型NSXに移植できたら・・
と思った人は多いようです。

’03年秋 私のNSXをホットバージョンのビデオ取材に使ったところ、
担当ドライバードリキンから、
非常にまとまりが良くて速いクルマだけど、「ABSのアタマが悪い」と言われたことから
後期型移植を決意して、チャレンジしてみました。


ノーマル状態
ユニットが大きいためゴチャついて見える。



後期型、前期型ABSユニットの比較。
重量も大幅に軽くなり、
ユニットの容積も著しくコンパクトになりました。
配線の類もカプラー1つにまとめられたため
電線が見えなくなってさらにスマートに見える。



これは前期型ABSのコントロールユニット。



後期ABSユニットを取り付け完了した状態。
シンプルでキレイに収まった。


スペアタイヤを搭載した状態。
ラジエターの後がすごく広くなったので
ラジエターからの熱気の抜けが良くなったかもしれない。
旧型ABSで使われていたオレンジ色のカプラーは切断撤去しました。



今回の作業で一番の問題はハーネスの入手
ABSユニットへの接続はこの専用カプラーで行う。
カプラー単品では販売していないため
フロントメインハーネスごと買わないといけない。
これは非常に高価で約12万円
私はカプラーのみ入手できたため
ABSユニットを購入すれば換装可能になりました。

故障の多い前期型を修理するなら、後期換装を検討するのも有効だと思われます。

2005年3月 KSPではこのカプラーを多量に入手しました。
当面 KSPでの後期ABS換装は定番メニューとして行っていく予定です。
換装料金は
部品代工賃全て込みで18万5千円(税別)です。


取り付けて実際走ってみて!

換装にまつわる作業時間はおよそ2日コース。
自分のNSXに初めて取り付けしたので
色々テストしてみました。

まず、走行中フロント片輪を路肩の砂利に乗せたままブレーキをかける!
ググググッと言う感触がペダルに伝わって来るが姿勢を乱すことなく安定して減速。
次に100キロ前後まで加速してフルブレーキ!
フロントの左右輪が交互にキャッキャッと鳴くような感じで、
一定の減速Gを保つ。

旧型ユニットで同じ事をやってみると
ABSが動作したとたんペダルに大きな振動が伝わってきて
あきらかに減速Gは抜けてしまう。
やはり、制御の遅さと古さを感じる。

圧巻は雨の高速走行
ミューの低い路面で100キロ前後からフルブレーキ!
旧型ABSでは減速しないのでかなりの恐怖を味わえる状況だけど、
後期型ユニットは車輌がまったく姿勢を乱さずに安定した減速Gを発揮する。


しかし、後期型ユニットの制御は単に現代的なだけであって、
現在販売されているNSX以外の新型車も全てこの程度の性能は持っています。
それくらいNSXの旧型ユニットは制御が古いわけです。

旧型ABSの最も恐ろしいのは
ABSが作動すると、ガガガガッと言う振動と共に
ブレーキペダルが床の方へ下がってしまう点だと思います。
短距離ならペダルが床に付く前にクルマが止まってくれるけど、
ABS作動時間が長いとペダルが床に付いてしまい
ブレーキが効かない状況に陥る可能性があります。
この現象のおかげで止まりきれなかった事故も事実発生しています
この現象が、ABSユニットの老化によるモノなのか、
そういった仕様なのかは分かりませんが
ドライバーは恐怖を味わいました。
後期型ユニットは原理的にこの現象が発生しません。
それだけでも安心感が大きく増しました。


特にウェット路面での著しい減速安定性は
パニックブレーキ時に前車に突っ込むか、安全に止まるかくらいの差があります。

前期ABSでトラブルが発生した場合の修理、
あるいは雨天での走行頻度が高い場合などでは
非常にお勧めできる流用だと思います。

このABS流用は
上記の作業記録では写真点数が少ないですが
実際作業はそれなりに難易度が高いです。
本来対応していない部品の換装になるため、
クラッチ交換などの通常作業よりはかなり時間もかかります。

また、重要保安部品であるブレーキ関連作業であるため
万一のトラブルは重大事故に直結します。
プライベーターでチャレンジするのは少々危険かもしれません。
個人で行うにはあくまで自己責任で行ってください。

☆追加情報☆

後期型ABSユニットには
標準品とNSX-R用が有ることが分かりました。
R用はABS動作が異なるそうですが、
現段階では、体感で分かる劇的な差は有りませんでした。


☆サーキット走行時のABS動作に関して☆

効きの強いパッドを使ってサーキット走行する際には
減速Gでドライバーは前に行こうとするため
足に力が入るのでどうしてもロック寸前を探ることが難しく、
さらに、下りながらのフルブレーキに至っては
リア荷重が抜けているためリアロックが発生しますが、
頭の良い後期ABS制御では
各車輪のロック状況に合わせてABS制御されるため
安心してABS任せでブレーキを踏むことが出来ます。
いくらドライバーが頑張っても
1つのブレーキペダルではリアのみロック解除という芸当は出来ないので
やはり優秀なABSは頼りになります。
ウェットのレースではABSの差が勝敗を分けると言われますが、
これは本当のことだと思いますね。


☆トラコンに関して☆

私のNSXは
すでにトラクションコントロールが取り外してあったので気付きませんでしたが、
初期型NSXではABSとトラコンが連動しているため
後期型ABS換装に伴いトラクションコントロールが動作しなくなります。
もっとも、
この旧型トラコンも制御が荒くて
タイヤサイズを純正から変更した際には本来の制御は行われなくなる上に、
アクセルワークによる姿勢制御などをマスターする際には
ドライバーの意志に反して突然スロットルが閉じられるため
非常に恐い思いをすることがあります。
タイヤホイルを社外品に交換している車輌なら
トラコンも解除してしまった方が良いかと思われます。


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